埼玉新聞

 

映画監督・大林宣彦さん最後の作品、深谷シネマで上映 妻恭子さん舞台あいさつで涙 常盤貴子さんらも参加

  • 映画上映の後、来場者にサインをする大林恭子さん。「ありがとう」という大林宣彦監督の最後の言葉も添えた=深谷市深谷町の深谷シネマ

 4月に肺がんのため82歳で亡くなった映画監督の大林宣彦さんの最後の作品「海辺の映画館―キネマの玉手箱」が、深谷市深谷町の深谷シネマで上映されている。初日の18日、大林監督の妻で、大林作品のプロデューサーを長らく務めた恭子さん(82)が舞台あいさつをした。恭子さんは、映画に込められた平和への思いを「次の世代につなげていきたい」と話した。

 「海辺の映画館」は、小さな映画館を舞台に、観客の3人の若者が映画の世界に入り込み、幕末から広島への原爆投下まで、さまざまな戦争に巻き込まれていく。反戦平和への強いメッセージと、独特のみずみずしい映像、歌や踊りもある「玉手箱」のような作品だ。撮影は2018年7~9月、大林監督の故郷の広島県尾道市などで行われた。

 舞台あいさつには、恭子さんと長女の千茱萸(ちぐみ)さんのほか、同作に出演した俳優の常盤貴子さんと厚木拓郎さんがサプライズ参加。大林監督は深谷シネマの名誉館長を務め、これまで何度も深谷シネマに訪れていることから、恭子さんは「深谷とは楽しいご縁をいただいている。今日も監督が一緒に来て、皆さんのそばにいると思う」と涙ぐんだ。

 常盤さんは「監督には『映画は観客の頭の中で完成する』ということを教えてもらった。この作品も、見た人が家に帰り、いろいろな人と会い、ニュースに触れ、生活をする中で完成する。皆さんも監督からバトンを託された。受け取ったメッセージを次の世代に渡してほしい」と話した。

 さいたま市などから訪れていた50代の女性3人は「尾道3部作の『転校生』から大林監督のファン。『海辺の映画館』は監督の思いが強く感じられ、『こちらも一生懸命見ないと』と思った。戦争や平和をテーマにしているが、見終わった後に暗い気持ちにならず、映画の楽しさも伝わってきた」と話していた。

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