分からなくても、“空振り”でも…学校で娘亡くした母、AEDの積極使用訴え 「ASUKAモデル」での救命事例も
埼玉県さいたま市南区の市文化センターで17日、県教育委員会主催の「学校安全総合事業支援」県成果発表会が開催された。2011年に市立日進小学校6年の桐田明日香さん=当時(11)=が駅伝の練習中に倒れて亡くなった。自動体外式除細動器(AED)が使われなかったことなどが影響した。登壇した母の寿子さん(53)は「救える命を救える学校であってほしい」と訴えた。
成果発表会には県内の公立小中学校、高校などの教員ら約150人が参加した。寿子さんは明日香さんが亡くなった翌年の12年、市教育委員会と協力し、体育活動等における事故対応テキスト「ASUKAモデル」を作成。現在はASUKAモデルの普及のため、小中学校や高校での救命の授業や講演会を行っている。
事故当時、けいれんや死戦期呼吸などの心停止の症状が出ていたものの、AEDが使われることはなかった。「AEDを使うことで病状が悪化することはない。空振りしてもOKという気持ちで積極的に使用してほしい。AEDは飾るものではなく使うもの」と説いた。
ASUKAモデルの策定からは約11年が経過した。ASUKAモデルによって助かったという事例が上尾市や狭山市、全国から報告されているという。「思い出すことがつらいときもあるが、これを乗り越えて一人でも多く子どもの笑顔を守りたい」と語った。
講演会では市立植竹中の山下誠二校長(65)も登壇。山下校長は事故当時、市教育委員会の指導2課で桐田さん一家の担当になった。ASUKAモデルの作成にも携わり、「ASUKAモデルの一番のポイントは意識の有無の質問に『分からない』の項目が加わったこと」と話す。山下校長は出席者に近隣のAED設置所が分かるアプリ「救命サポーター」のインストールを呼びかけた。
市立大宮国際中等教育学校5年の川島一護さん(16)は講演を聴き、「AEDの場所を多くの人に知ってもらえるような活動をしていきたい」、同校保健衛生部主任の鈴木勝真教諭(39)は「教員一人一人が当事者意識を持つ必要がある。万が一に備えた練習の場をもっと増やしたい」と話した。