断念…地下鉄7号線の岩槻延伸、年度内は申請できず SR浦和美園駅―東武岩槻駅までの7・2キロ 物価高騰で建設費1・5倍、1300億円に増大 申請断念で市長、取材に応じず
さいたま市は24日、地下鉄7号線(埼玉高速鉄道=SR)岩槻延伸について、2023年度中の鉄道事業者への事業要請を実施しない方針を明らかにした。概算建設費の試算が物価高騰により当初の1・5倍となる1300億円とされ、整備計画に新たな課題が出てきたとして、年度内の事業申請を困難と判断した。概算建設工期の試算は当初の7年から18年程度に延びた。市は鉄道事業者に技術支援の要請を決め、課題解決と計画内容を精査して、事業を今後も進める意向を示した。
延伸計画はSR浦和美園駅―東武岩槻駅までの約7・2キロ。清水勇人市長は21年6月の市議会6月定例会で、「23年度中に鉄道事業者に対する要請を行う」と初めて表明した。申請断念について、清水市長は24日、報道側からの要請に対して取材に応じず、コメントも出さなかった。
延伸計画には整備費用の3分の1を国が補助する「都市鉄道等利便増進法」を活用する。国、県と市、鉄道事業者が3分の1ずつ負担する仕組みで、採算性などの条件が必要。市の協議会は18年3月、沿線開発や快速列車の実施など条件付きながら、五つのケースのうち二つのケースで条件を満たすとしていた。
市は事業費用を適切に算定するため、鉄道建設・運輸施設整備支援機構に調査業務を委託。23年1月から調査が始まり、最近になって1300億円の試算が示され、県と市の負担は約430億円に上る。市の協議会が17年度に算出した860億円より1・5倍に増加した。高騰の理由について、労務費、資材単価の高騰のほか、働き方改革の適用、建設計画の深度化などを要因に挙げている。
延伸計画では、岩槻駅周辺の施工環境や運賃改定率などの課題が明確化したという。アフターコロナや物価高騰など社会情勢の変化を踏まえ、市は課題解決に同機構とSRに技術支援の要請を決定。市は24年4月以降に委託契約を締結する意向を示し、「鉄道事業者と一体となって、計画内容を精査して次のステップに進めていく」としている。
市は24日の市議会地下鉄7号線延伸事業特別委員会に報告した。市都市戦略本部の幹部は特別委の質疑で、「立ち止まることなくしっかり前に進めたい」と事業継続の意向を示した。年度内の事業申請断念については「地元の熱意、応援していただいた人に大変申し訳ない。市として、相当の責任があると思っている」と述べた。