埼玉新聞

 

<新型コロナ>死刑宣告…時短要請に飲食店が悲鳴「南銀で閉店続出か」「他の地域に客が流れ込むのでは」

  • 「お客さんが来るのを信じて準備するしかない」と店内の消毒をするスタッフ=1日午後5時ごろ、さいたま市大宮区仲町の「新 ARATA」

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、繁華街のある地域に限定した飲食店などの営業時間短縮を、埼玉県が要請することになった。対象となるさいたま市大宮区や川口市の飲食店からは年末の書き入れ時を前に「死刑宣告」「仕方ない」と悲鳴や諦めの声が。先の見えない冬の訪れに、店主らは短縮が早く終わることを祈っている。

 さいたま市大宮区の南銀座商店街にあるにんにく料理専門店「新 ARATA」(同区仲町)は例年この時期、最大30席が連日埋まるほどの忘年会客が入っていたが、今年は予約も現在1件のみ。店長の櫨山心さん(39)は「(時短要請は)死刑宣告に近い。これ以上、お客さんが来なかったら生活できない」と嘆く。2、3軒目として利用されることも多く、午後10時以降は書き入れ時という。「4月から赤字続き。要請に従うか従わないか、どちらの選択も先が全く見えない。今回を機に南銀でも閉店する店が続出するのでは」と話す。

 大宮駅から氷川神社へ続く一の宮通りにあるピザとチーズ料理がメインの「コネヤキゼロヨンハチ」(同区大門町)では、米山耕二マネージャー(43)が「年末にかけて本当に痛いが仕方がない」と一定の理解を示す。11月に入り、「Gо Tоイート」で売り上げも回復してきた直後の時短要請。「大宮はクラスターが発生したので、どうしても良い印象がないのでは。今は我慢の時。(時短要請が終わる)18日以降から年末にかけて、お客さまに最高の料理を提供し、どうにか巻き返していきたい」と懸命に前を向いた。

 大宮南銀座商店会副会長でスナック経営の宮森弘さん(76)は「感染防止対策を注意して、大宮で現在、クラスターは起きていない。なぜなのか納得いかない。このままだと(午後10時以降も)営業を続ける店が多いのではないか。1日2万円もらっても、への役にも立たない」と話した。

 来春からはJR東日本の終電繰り上げが実施され、影響が大きいとみられている。南銀で生まれ育った宮森さんは、店を構えて約45年で、最も苦境に立っているという。「南銀にお客さんは全然いない。さらに大宮を避けて飲む人が出てしまう。経営者はみんな困っている。さいたま市も何らかの支援をしてほしい」と訴えた。

 川口市のJR西川口駅近くのタイ料理店「カウケン」は、8~9月の時短要請に続き、今回も県の要請に従う意向を示している。西川口で14年間、営業を続けている同店の店主松山オヌマさん(52)は「今の感染状況を見ると仕方がない」と話す。

 同店では、4月ごろからテークアウト販売を強化し、どうにか家賃を払える程度の売り上げは確保できているという。松山さんは「西川口に活気が戻ってくれるのであれば協力していく。お客さんも不満を言う人はいない」と笑顔を見せる。

 居酒屋を営む40代の男性は、協力金が出るのであれば、受け入れるという。「今のところ忘年会などの予約もなく、客足はほとんど戻っていない。多少、閉店時間を早めても、売り上げは変わらない」と本音を口にする。

 時短要請の対象地域が限定されていることについては、「他の地区に客が流れ込んでしまうのではないかと心配。どうせなら、県内全域で実施するべきだ」と不満を示した。

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