埼玉新聞

 

大問題…3500席以上のアリーナ建設で体育館や公園整備、「木を切らないで」住民ら再検討を求め、建て替え延期に 総事業費は100億円超「公園は子どもが遊ぶ場所、負の遺産を残していいのか」

  • 老朽化が進行している熊谷市立市民体育館=10日午前、熊谷市桜木町

    老朽化が進行している熊谷市立市民体育館=10日午前、熊谷市桜木町

  • 「荒川公園と市民体育館を考える会」の中間報告会=10日午前、熊谷市宮町の市緑化センター研修室

    「荒川公園と市民体育館を考える会」の中間報告会=10日午前、熊谷市宮町の市緑化センター研修室

  • 老朽化が進行している熊谷市立市民体育館=10日午前、熊谷市桜木町
  • 「荒川公園と市民体育館を考える会」の中間報告会=10日午前、熊谷市宮町の市緑化センター研修室

 熊谷市立市民体育館の建て替え案を含む「荒川公園周辺再整備基本計画」が大きな問題になっている。市は老朽化した施設を刷新し、3500席以上の観客席を備えるアリーナの建設を目指しているが、大規模な工事のため隣接する荒川公園の整備も必要になる。100億円を超える総事業費も。市民団体からは「荒川公園の木を切らないでほしい」などの要望が寄せられ、市議会は昨年の12月定例会で住民への配慮や再検討を求める請願を賛成多数で採択。市は2030年度の開設を目指していたが、遅れることが必至になった。

 10日午前、熊谷市宮町の市緑化センター研修室。市民団体「荒川公園と市民体育館を考える会」の中間報告会が開かれた。同会は昨年8月に計画案の見直しを求めて約3500筆の署名を市に提出していた。中間報告会ではこれまでの経過が報告され、参加者約40人が意見交換を行った。

 参加者からは「文化と歴史を大事にするまちづくりをしてほしい」「公園は子どもが自由に遊べる大事な場所で、未来の子どもに負の遺産を残していいのか」などの意見が出た。同会共同代表の小林悠和さん(42)は「やっぱり話し合いや対話が大事で、これからも対話をしながら考えていきたい」と語った。

 市によると、市立市民体育館は1965年に建築され、2025年に耐用年数の60年を迎える。市は老朽化した体育館を建て替えるとともに、荒川公園を時代に合った都市公園として再整備することを計画している。

 現体育館は約千人の観客が入るが、計画案では新体育館のアリーナは3500席以上の観客席を備え、総事業費は102億円に上る。請願に関する賛成討論で「市民の意見を取り入れた上で調査・研究してほしい」、反対討論では「具体的な変更の要望がなく、どうすればいいのか。議会の歴史と相いれない」などの意見が出た。採決の結果、賛成が19人、反対が9人で請願は採択された。

 請願では、施設規模や建て替え位置などに関しては、現計画案の検討と併せて、現市民体育館の敷地を最大限活用するとともに、隣接する市立文化センター敷地などの活用の可能性も含めた調査・研究を行うほか、市民への速やかな情報提供を行うことを求めていた。

 小林哲也市長は「議会の意思を真摯(しんし)に受け止める」と語っており、市スポーツタウン推進課も市立文化センター敷地などの活用の可能性も含めた検討を開始。同課の担当者は「具体案はないので、さまざまな検討が必要で、新たに計画案を作り直す必要がある」と話していた。
 

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