埼玉で初確認、巨大なガ「キョウチクトウスズメ」飛来 羽を広げると大きさ12センチ、埼玉在住者がXに投稿し発覚 幼虫は有毒植物を食べ、すでに食い荒らされた痕あり食害を懸念 本来は南方に生息、なぜ埼玉に
沖縄県など南方に生息する大型の蛾(が)類「キョウチクトウスズメ」が昨年秋、県内で初めて確認された。同時期に近県でも発生しており、台風などの影響で南方から飛来し、広範囲に侵入している可能性もある。寒さに弱いため、県内で定着する可能性は低いものの、幼虫は県内でも栽培されるキョウチクトウやニチニチソウの葉などを食べて育つため、園芸植物への被害が懸念されている。
キョウチクトウスズメはスズメガ科に分類され、羽を開いた時の大きさは8~12センチ。羽には緑色と桃色の模様があり、5~11月に成虫が見られる。幼虫はキョウチクトウ、ニチニチソウなどの有毒植物を食べて育つ。国内では1960年に鹿児島県内で初確認され、関東地方では島しょ部の小笠原諸島で記録されている以外は2010年10月、千葉県内で幼虫が確認されたのみ。県内ではこれまで確認事例がなかった。
蕨市在住で埼玉昆虫談話会、日本蛾類学会の飯森政宏さん(47)によると、キョウチクトウスズメが県内で初めて確認されたのは昨年9月。県内在住者が「きれいな蛾がいる。写真撮った」などと写真とともに短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)に投稿したことが発端だった。
情報を基に飯森さんが現地を訪れたところ、マンションの階段に設置された蛍光灯に飛来した1匹を確認。近くには食い荒らされたツルニチニチソウがあった。その後、飯森さんらが情報提供を呼びかけ調査した結果、11月までにさいたま市内8カ所、川口市内2カ所で確認。さいたま市役所・浦和区役所のニチニチソウの花壇からも、さなぎと抜け殻が発見された。
昨年秋には県内ほか、近隣の茨城、静岡両県で発生が確認されており、南方ですでに定着している地域で羽化した雌の個体が、台風など何らかの気象条件で本州東部の広範囲に侵入していることも考えられるという。
飯森さんは、定着した地域では羽化した成虫が春から夏に見られることを踏まえ「この辺りの寒さでは越冬はできないはず。南方から飛来した個体が産卵して羽化したのでは」と推測する。最高気温が10度を下回る日が続くと、さなぎが羽化に至らないとの研究報告もあることから、他地域から来た種が一時的に発生する「無効分散」にとどまり、県内ではまだ越冬、繁殖はしていないとみている。
キョウチクトウスズメは目立つ外見ではあるものの、成虫、幼虫ともに体表に毒はなく、手で触るなど、普通に接する分には有害ではない。ただ、幼虫による園芸植物への食害が懸念されており、飯森さんは「屋外では難しくとも、ビニールハウス内などでの繁殖は可能性が否定できず、ことし早い段階で幼虫が確認されたら注意が必要」と呼びかけている。