子ども食堂“毎日どこかで” 熊谷市内全28小学校区、29日まで開催 市民・企業・学生が連携
埼玉県熊谷市の「一般社団法人熊谷こどもまんなかネットワーク」は10日から、市内全28小学校区で子ども食堂を開催している。市内の飲食店など31店舗が協力し、29日までの期間中はほぼ毎日どこかの地域で子ども食堂を実施。利用者からは好評を呼んでおり、関係者は今後の継続的な開催に向けて動き出している。
■交流の場に
15日夕、熊谷市肥塚の飲食店「洋食・喫茶 PUBLIC DINER」。新しい形のコミュニティー食堂として「PUBLIC TABLE」が行われた。コミュニティー食堂とは年齢や性別、社会的地位、趣味などを問わず、さまざまな人たちが一堂に会して食事をする空間だ。
メニューは地元のソーシャルファーム(社会的企業)埼玉福興が栽培した米や野菜などが提供され、大勢の家族連れが美食を満喫した。今回は立教大学の授業「SOCIAL&PUBLIC」ともコラボレーション。立大の学生が子どもたちと交流も深めた。
市内から参加したいずれも30代の女性2人はそれぞれの子ども3人と4人を連れて来場し、「めっちゃ楽しかった。家から遠い場所だと子どもが着く間に寝てしまうこともあるので、近くにあるといい。また子ども食堂が開催されれば必ず来たい」と語った。
■衝撃の一言
同店経営者で同ネットワーク統括ディレクターの加賀崎勝弘さん(51)は「店名は大衆食堂という意味なので、別の家族が一緒のテーブルでご飯を食べたりしていて、まさにパブリックダイナーだった」と満足そうだった。
加賀崎さんが子ども食堂の取り組みを行う契機になったのは2年前。市内の給食関係者から「夏休み明けにげっそり痩せてくる子どもがいる」と聞いたことだったという。加賀崎さんは「それまで貧困のイメージが浮かばなかったが、そんなことがあるのかと思ったし、本当に衝撃的だった」と当時を振り返る。
加賀崎さんは立大の授業「SOCIAL&PUBLIC」の講師も務め、市民や学生が行政課題の解決に取り組むアイデアコンテスト「チャレンジ!! オープンガバナンス2022」(東京大学主催)では、「立教サービスラーニング『SOCIAL&PUBLIC』」がグランプリを受賞。受賞したアイデアは「全国初! 地域内の全小学校区での子ども食堂開催を実現」だった。
■団体を法人化
熊谷市石原で子ども食堂「熊谷なないろ食堂」を営む山口純子さん(49)と協力し、同ネットワークの前身となる熊谷子ども食堂ネットワークを設立。昨年に子ども食堂フォーラムや子ども食堂立ち上げセミナー&相談会、講演会も開催するなど、積極的な活動を展開してきた。
今月からは団体を法人化し、有料会員制度や熊谷こどもまんなか基金も設けるという。今回の子ども食堂の取り組みは実験的な開催で、将来的には週1回の実施を目指している。加賀崎さんは「子どもたちが安心できる空間になるよう定期的に開催していきたい」と話している。