埼玉の新たな魅力、舞台に 3月9、10日「回遊」の公演 さいたま芸術劇場、県民が多彩な文化表現
彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市中央区)の芸術監督で、ダンサー・振付家の近藤良平さん(55)が、県内の多彩な文化を掘り起こす「埼玉回遊」。同劇場のリニューアルオープンを記念して、集大成となる舞台「埼玉回遊〈特大号!〉」が、3月9、10日に公演される。近藤さんが構成・演出を務め、川越の神楽や行田の足袋など県内各地の文化や歴史を盛り込み、新たな視点で埼玉の魅力を表現する舞台だ。
2月上旬、同劇場の大練習室では、160年以上前から三芳町に伝わる「竹間沢車人形」を使った稽古が行われた。「ワン、ツー、スリー、フォー」。芸術監督のカウントで、若手ダンサー6人がそれぞれ人形を操る。せりふに合わせて突っ込みポーズをしたり、リズミカルに踊ったり。意外な動きの連続に、近藤さんは「すごく面白い」と笑顔を浮かべた。
大規模改修工事による劇場の休館期間(2022年10月~24年2月末)を利用し、埼玉回遊は昨年6月から始まった。他薦で集まった123件の中から25件を選び、半年間かけて現地を訪問。川魚のミニ水族館(吉川市)やクルド人料理教室(川口市)などさまざまな人や場所をリサーチし、ショートフィルムも制作した。近藤さんは「どの活動も僕の想像を超えており、大きな刺激を受けた。惜しみない情熱をささげる姿勢に、人間の素晴らしさや埼玉の豊かさを感じた」と振り返る。
総まとめとなる舞台に出演するのは、川越の神楽や木やりを伝承する団体、美里町のほら貝を演奏する女性など回遊で交流したメンバーが中心。さらに「モッキンカン木の森美術館」(さいたま市)の彫刻や新座市のチェンバロなど地域ゆかりの品物も登場する。伝統芸能とダンスの異色コラボレーションに加え、影絵や演奏もあり、「劇でもダンスでもない、見たことのない舞台」になっているという。
出演者の一人で、本庄市在住の怪談師・北城椿貴さん(35)は「埼玉そのものを表現するすごい企画。文化の新たな魅力を知るきっかけになるのでは」と期待感を示す。
近藤さんは「回遊で感じたことを舞台に反映した。伝統にとらわれることなく、新しい見せ方や表現に挑戦している。賛否あると思うが、先入観なしに来てもらい、埼玉の文化が意外な形で出てくることに注目してほしい」と話した。
3月9、10日とも彩の国さいたま芸術劇場大ホールで午後2時開演。チケットは一般2千円。県内在住者対象の県民優待チケット千円。問い合わせは、同劇場(電話0570・064・939)へ。