埼玉新聞

 

同時に子宮頸がんと妊娠、病院から「がん進行なら諦めて」 朝霞の45歳、無事に出産 闘病ブログを本に

  • 闘病記「癌で妊婦で45歳です」を出版した森田美佐子さん=朝霞市役所

 45歳で子宮頸(けい)がんと出産を同時に経験した朝霞市の司会者紹介プロダクション会社代表の森田美佐子さん(46)が、「産めるのか否か」と不安を抱えながら過ごした闘病中のブログをまとめた「癌(がん)で妊婦で45歳です」(文芸社刊、B6判、税別千円)を出版した。昨年1月、無事に男児を出産し、母子とも健康に過ごしている森田さんは「子宮頸がんの検診受診の啓発に役立ててほしい」と同市に著書15部を寄贈した。

 森田さんは大阪市出身。大学卒業後、テレビ番組のナレーションや司会者などを経て、2015年に司会者の育成や紹介などをするプロダクション会社を設立した。

 17年7月、下半身に違和感を覚えたため、都内の大学病院で検診したところ、子宮頸がんと妊娠が同時に分かった。その後、半年間にわたり通院治療を続け、18年の1月25日、帝王切開で無事に男児を出産。その直後、約8時間かけて、子宮や卵巣などの全摘手術を行った。

 「私と同じ事例はあるが、子どもを諦めるケースもあります。私の場合も当初は全く分からず、病院からも(がんが)進行したら(出産を)諦めてほしい」と言われていたという。45歳で初産を経験した森田さんは子宮頸がんと妊娠が同時に判明した当時の心境をこう振り返る。

 判明後、日常の出来事をはじめ、仕事を抱えながらの生活、医者とのやりとりなどを前向きに日記調にブログでつづった。このブログへのアクセスが多く、術後の経過も順調だったことから、「生きてきた証しを残そう」と、約半年間のブログをリライトした本の出版を決めた。

 森田さんによると、日本の子宮頸がん検診の受診率は約40%。毎年約1万人が発症している。20代から30代の患者や死者が増加しており、妊娠や出産がかなわなくなるケースも少なくないという。

 森田さんは「病院と行政のおかげで母子ともに普通の生活を送れる自分はまれなケース。若くして亡くなったり、後遺症に苦しんだりしている患者さんがたくさんいることを闘病中に知りました。この本を通じて検診の大切さを感じてもらい、啓発活動につながれば」と話している。

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