埼玉新聞

 

<新型コロナ>観光地の冬の風物詩、公開に判断分かれる イチゴ園の観光客は半減、暖房代も負担に

  • 例年より観光客は少ないが、見頃を迎えている「あしがくぼの氷柱」=21日、横瀬町芦ケ久保

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が再発令されてから2週間が経過した。埼玉県内の観光地として知られる秩父地域は冬の風物詩「秩父三大氷柱」の公開で判断が分かれ、にぎわいを見せる場所がある一方で、自由見学とした場所も。だが、観光客は例年より少なく、観光イチゴ園もオープンしたが、関係者は頭を抱えている。

■明暗

 「撮るよ」。21日午前、横瀬町芦ケ久保の「あしがくぼの氷柱」。観光客が自然の寒さで生み出す氷の芸術の前で記念撮影していた。町観光協会氷柱部会による厳冬期の誘客事業で、今年で8年目。スプリンクラーやホースの穴から散水して氷柱を育てている。今年は寒さの影響で、例年より早く見頃を迎えている。

 新型コロナウイルス対策で1時間ごとの入場者数を400人程度に制限。混雑が予想される土日や祝日の午後1時から同7時までの入場については事前予約制とした。ライトアップが行われた16、17日には約3400人が訪れるなど、初日の12日から21日までで計6926人が来場した。

 同部会長の若林定之さん(56)は「関係者の間でも開催に慎重な声もあったが、予想より人が出ていて、地域への波及効果もある」と語った。

 いずれも秩父三大氷柱である秩父市大滝の「三十槌(みそつち)の氷柱(つらら)」も感染対策を行いながら開催しているが、小鹿野町河原沢の「尾ノ内氷柱」は見学期間を設定しないで自由見学とした。尾ノ内渓谷氷柱実行委員会会長の北孝行さん(77)は「秩父地域も新型コロナの感染者が増えていて、判断は正解だったと思う」と話した。

■半減

 現在はイチゴ狩りのシーズンでもある。秩父地域には約30カ所に観光イチゴ園があり、毎年1月ごろから6月中旬ごろまでオープンしている。例年は週末を中心に大勢の観光客が訪れているが、今年の観光客は例年より少なく、関係者たちは頭を悩ませている。

 秩父市下吉田のただかね農園では、イチゴ9品種を65アールで栽培。ビニールハウス内は真っ赤で大粒のイチゴが実っているが、観光客は例年の半分ほど。今年は検温やアルコール消毒などの新型コロナ対策も講じたが、寒さの影響で暖房代も負担となっている。

 同園を営み、JAちちぶいちご部会の部会長も務める高野宏昭さん(46)は「観光客がイチゴ狩りに来て、イチゴを食べてもらうことを想定してやってきているので、本当に困るね」と肩を落とした。

■前向く

 小鹿野町小鹿野にある老舗旅館「須崎旅館」では、国の観光支援事業「Go To トラベル」が昨年12月28日から全国で一時停止されたこともあり、厳しい状況が続いている。昨年は緊急事態宣言時に休業を余儀なくされたが、夏から徐々に宿泊客が戻り、同トラベルの後押しも受け、秋以降は忙しい日々だった。

 部屋で食事を提供する「おこもりプラン」やビジネスマン向けの「テレワークプラン」を考案したが、今は掃除をしながら、我慢の日々を送る。同旅館を営む若女将の須崎真紀子さん(44)は「お客さんの大切さを改めて感じた。今までのお客さんを大事にしながら地道にやっていきたい」と話していた。

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