埼玉新聞

 

<新型コロナ>生活困窮者へ食品を無料配布 開催困難な子ども食堂がフードパントリーに 併せて相談会も

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 医療生協さいたま生活協同組合(雪田慎二理事長)は1月30日、同生協が運営する埼玉県川口市木曽呂の老人保健施設みぬま敷地内で、食品を生活困窮者へ無料配布する地域拠点活動「フードパントリー」を行った。コロナ禍で職を失うなどして生活に困窮する人や、近隣に多く住むクルド人など約30世帯が食料を受け取りに集まり、相談員による健康や生活の相談会にも参加した。

 同生協では、地域交流と貧困対策を目的に子ども(多世代)食堂の開催に取り組んできた。しかし新型コロナウイルス感染拡大で開催が困難になったことから、フードパントリーに切り替え、月1回無料配布会を実施している。

 食品は組合員や職員、フードバンク埼玉(本部・さいたま市浦和区)などからの寄付。コメや野菜、肉、缶詰など約3~4日分の食品を無償提供し、イスラム教の戒律で豚肉を食べないクルド人のために鶏肉も用意。必要な世帯にはおむつや粉ミルクなども手渡された。

 同生協が設置する埼玉協同病院(川口市)の看護師や社会福祉士らが健康や生活状況について聞き取りをし、公的制度の利用につなげる相談会も併せて行われた。特にコロナ禍で失職・減収し、生活に困窮しているといった声や、無年金で収入がない、生活保護の申請には抵抗があるなどの切実な声が聞かれた。

 トルコなど中東地域から迫害を逃れてきたクルド人の姿も多く見られた。川口市や蕨市に約2千人暮らしているとみられており、難民申請が認められず、就労が許可されない「仮放免」という立場に置かれている。住民登録がないため、国による1人10万円の特別定額給付金も受け取れず、コロナ禍でますます厳しい生活を強いられている。

 同生協本部けんこう文化部の村崎郁子次長は「そもそも就労ができないため、生活の基盤がない。毎回(無料配布会に)来ているクルド人家族もいる」と話す。生きるため日雇いの仕事などをしている人もいるとみられるが、「現状ではそれさえもなくなっている。コロナ禍が問題をより深刻にしている」と厳しい現状を訴える。

 村崎次長は「貧困や格差の問題はそれぞれに事情があり、複雑。しかし命をつなぐことが何より大事。食品とともに問題を解決する場を今後も提供していきたい」と話していた。

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