埼玉新聞

 

高級食材ホンモロコ、柔らかく上品な肉質特徴 熊谷の養魚場は試行錯誤の連続、養殖でその味を出すには

  • 養殖しているホンモロコを手にする柿沼賢さん。頭に巻いた赤いタオルがトレードマークだ=熊谷市上中条の柿沼養魚場

 高級食材として知られ、県内でも養殖が盛んな淡水魚のホンモロコ。埼玉県熊谷市上中条で養魚場を営む柿沼賢(さとる)さん(37)は、この魚の養殖を9年前から行っている。荒川と利根川に挟まれた熊谷は地下水が豊富。清らかな水で育まれた地場の特産品だ。

 ホンモロコは琵琶湖原産で、8~15センチほどの淡水魚。県内では1992年に水田を活用した養殖技術が確立され、県東・北部を中心に生産されている。柿沼さん方では父がこの魚の養殖を始め、2012年に後を継いだ。高齢化が進む養殖業者の中で、30代の柿沼さんはとびきり若い。

 ホンモロコは毎年4月、魚巣に産卵し、ふ化して稚魚になると養殖池に移す。高タンパクのえさを与え、水産用医薬品は一切使用していない。くみ上げている地下水は荒川水系。柔らかく上品な肉質が特徴の魚だが、その味を出すには「水のきれいさが重要」と柿沼さんは言う。

 養殖は試行錯誤の連続だった。夏の猛暑で水温が上がらないようにと、養殖池に水草のホテイアオイを植えたところ、繁茂しすぎて酸欠状態になってしまった。そこでハスに植え替えたところ、葉が適度に水面を覆い、レンコンも収穫できた。さらにレンコン収穫体験のイベントも開催するなど、一石三鳥の効果に。また、除草には除草剤は使わず、オスヤギ2頭を放して草を食べさせている。

 以前は活魚のみを発売していた。だが、生きている魚を調理することに抵抗を感じる人もいるため、ホンモロコの甘露煮や煮魚、燻製など加工品も販売するようにした。イベントにも積極的に参加してPRに努めている。

 直売場を訪れる年配のお客さんの中には、子どものころに川で魚を取って食べていたという人もいる。川魚に親しんでいた地域の食文化を指摘する柿沼さんは「まずは地元の人にもっと知ってもらいたい」と話していた。

 問い合わせは、柿沼養魚場(電話090・4719・4776)へ。

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