埼玉新聞

 

<新型コロナ>困窮者向け緊急の一時宿泊、利用者は1人 さいたま市、周知に遅れ 相談窓口も設置せず

  • さいたま市役所=埼玉県さいたま市浦和区常盤

 新型コロナウイルスの影響などで住居を失った生活困窮者向けに、埼玉県さいたま市が年末年始に実施した緊急一時宿泊事業の利用者は1人だったことが8日、分かった。市民への周知は昨年12月26日にホームページで情報提供を行ったものの、市側は「宿泊施設の確保や対応する福祉事務所の輪番体制の整備に時間を要したため、周知が遅くなった。反省すべき点と認識している」と述べた。同日の市議会2月定例会の代表質問で、小川寿士市議(民主改革)の質問に、高橋篤副市長が答弁した。

 厚生労働省は昨年11月24日、都道府県や政令指定都市、中核市に、生活困窮者向けに年末年始の臨時相談窓口の設置などを求める通知を出していた。「新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、年末に解雇や雇い止めの増加が予想されます」「居所を失った方、生活に困窮した方への迅速な対応が例年以上に必要」などとして、住民への広報、生活保護者への適切な対応、生活困窮者の宿泊施設への入所支援なども要請していた。

 市生活福祉課が昨年12月21日付で作成した緊急一時宿泊事業の文書には、事業周知について「内部連絡用のみ」と記されている。小川市議の質問によると、市側に周知の方法を確認したところ、当初は「周知をしない」と回答。小川市議らが市民への周知を要請し、同月26日に市のホームページで公表された。報道機関への情報提供はなかった。

 緊急一時宿泊事業の実施期間は12月29日~1月4日で、浦和区のビジネスホテルの7室を借り上げていた。利用したのは男性1人で、知人から情報提供を受けて大宮区役所に連絡し、3泊4日滞在。その後、生活保護を受給して無料低額宿泊所に入所したという。市は生活保護受給者や生活困窮者向けの居住支援事業に、本年度は約8600万円の予算を計上。受託事業者が同ホテルを12月21日~1月19日まで借り上げていた。

 年末の臨時相談窓口については、朝霞市や志木市のほか東京都足立区や横浜市などが設置して対応していた。さいたま市は相談窓口を設置せず、電話による輪番体制で対応した。高橋副市長は「今のやり方が最適だとは思っていない。各自治体の状況を見ながら、適切な対応を検討する」と答弁した。

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