パン焼けてふっくら!じわり広がる“サロン”人気、障害児の母親ら集う 親も世話してダブル介護、多忙な日々の中…見つけた大切な居場所 仲間が増え、視野が広がった母親ら笑顔 今後さらに多彩なイベント開催へ
地域との共生を図ろう―と、さいたま市北区の社会福祉法人「いーはとーぶ」(西尾工理事長)が、昨年4月に立ち上げた「いーはとーぶサロン」(山口詩子代表)が、地道な広がりを見せている。今では、障害を持つ子どもの介護に追われる母親たちの居場所づくりにも一役かっている。サロンでは現在、パン作りの「いーぱんくらぶ」やヨガ教室、成年後見人制度などの学習会を開催。パン焼きは月に1度、同市北区土呂町の一角にあるサロンの調理室で行っている。
今月初旬、同室にパンが発酵する芳しい匂いが漂った。7人の参加者が、話しながらパン生地をこねていた。
6回目の今月のメニューはコッペパン。講師は、青木幸江さん(56)。脳性まひで重度の障害がある長男(25)が、同法人の施設に通所している。青木さんは、長男が帰宅する午後4時までの自由な時間に山口さんたちとメニューを考えたり、下準備をする。長男と母のダブル介護をする青木さんにとって貴重な時間でもある。
パン作りは、電子レンジで発酵を促す時短レシピ。予備発酵後の生地をこねる作業に戸惑う初めての参加者に、当初から参加する斎藤ひさ子さん(53)が「子どものほっぺのような軟らかさよ」とアドバイスした。
生地の成形で「思うように伸びてくれない」と口々に話す参加者も。しかし、最後にオーブンでパンが焼き上がると満面の笑みが広がった。
斎藤さんは、ふっくらとしたコッペパンを手に「出来たてを子どもに食べさせたい」と話す。長男(28)は、6歳でかかったインフルエンザの後遺症で全身にまひがあり、同法人のグループホームで暮らすからだ。斎藤さんは「子どもの学校時代にあった親同士のつながりが、今は少なくなった。だが、ここで知らない人と交流することで仲間が増え、視野が広がった。大事な居場所」と喜ぶ。
上尾市から参加した山木貴世さん(57)は青木さんの高校時代からの友人。参加は3回目になる。「サロンは知らない人でも受け入れ、つながりができるので楽しい」と、今後も参加の予定だ。
山口さんは「サロンは家族の憩いの場としてスタートしたが、その輪が広がっている。今後は囲碁や将棋を楽しむ場、スマホ教室、映画会なども企画し、地域のいろいろな人を巻き込みながら活動したい」と話している。
問い合わせは、いーはとーぶ(電話048・662・5800)へ。