<埼玉県公立高入試の速報解説>新型コロナの影響で出題範囲が縮小…難易度や平均点の動向は?
26日に県内各地で一斉に実施された「令和3年度県公立高校入試」。教育ジャーナリストの梅野弘之氏が分析した試験問題の難易度や特徴などを速報します。
令和3年度入試は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための臨時休校長期化に配慮する形で、各教科とも出題範囲が縮小されましたが、それが出題内容や配点にどのような影響をもたらすかなどに注目が集まっていました。
以下、各教科の出題内容、配点等について確認しておきます。
【国語】
大問の構成と配点は昨年度と同じでした。大問3の長文読解は、河野哲也著「人は語り続けるとき、考えていない 対話と思考の哲学」を題材とした問題でしたが、難解な論説ではなく、随筆的な文章だったので読みやすく、例年より取り組みやすかったと考えられます。
大問5の作文はグラフを資料として、「ボランティア活動に期待すること」について自分の考えを書かせる問題でした。例年、「体験をふまえて書く」という条件が付けられていますが、ボランティア活動を経験している中学生も多いので、今回はその点では書きやすかったでしょう。
難問は少なく、平均点は前年並みか、やや上がることが予想されます。
【数学】
学力検査問題の大問構成は昨年度と同じでした。大問1が基礎基本的問題16問で構成され、配点が65点であるのも昨年と同じでした。
大問1は、内容的には、有効数字に関する問題などやや目新しい問題も見受けられましたが、全体としては平易な問題でした。出題範囲の縮小に伴い増加するとの予想もあった関数についての問題ですが、例年よりむしろ少なめでした。
平均点は昨年並みと予想されます。
学校選択問題は、大問1の小問数が1問増え、配点も2点増えるなど多少の変化はありましたが、全体構成は例年通りでした。大問4の(3)、大問5の(2)(3)あたりは苦しんだ受験生が多かったかもしれません。極端な難化はありませんが、平均点は昨年並みか、やや低下する可能性もあります。
【社会】
出題範囲の縮小に伴って、大問ごとの配点が昨年までと変わりました。公民分野の配点が25点から18点と7点減り、その分、大問2・日本地理が2点、大問3と大問4の歴史が各2点、大問6の3分野総合が1点増えました。
例年、歴史分野の出来が他分野に比べ良くないので、ここでの配点増がどう影響するかが注目されます。
つい最近行われたばかりの神奈川県公立入試や千葉県公立入試とほぼ同内容の問題も出題されていました。多くの県で出されるのは、その知識が基礎基本であることを示しています。
全体としては難しくなった印象はありませんが、前述したように、苦手としている人が多い歴史分野の配点増がどう響くかというところです。
【理科】
大問構成と配点は昨年と同様でした。大問2は地震についての問題が出題されましたが、出題範囲が縮小された結果、ある程度予想できたことでした。
小問数が多い中で、問題文をしっかり読むことが求められているのが、ここ数年の理科の傾向です。計算問題がいくつかありましたが、中にはやや難しい問題もありました。
例年多くの受験生が苦戦する大問5ですが、今年は比較的取り組みやすかった印象です。
小問数が多く、読まされる分量も多い理科では時間配分が重要になります。これさえ誤らなければ高得点が可能でしょう。
【英語】
学力検査問題の大問構成、配点などは昨年と同様でした。各小問の設問内容や配点もほぼ昨年と同様であり、過去問でしっかり準備してきた受験生にとっては取り組みやすい問題でした。
英作文も「海外に行くならどこに行きたいか」を書く問題で、受験勉強の過程で一度は書いたことがあるであろうテーマでした。
学校選択問題の大問構成、配点なども昨年とほぼ同じでした。最近の傾向は英答問題が増えていることで、大問2では昨年より英答問題が1問増えていました。ただし、極端な難化は見られず、平均点も昨年並みに落ち着くとみられます。
■解説:梅野弘之氏
教育ジャーナリスト、元埼玉県公立高校教諭。メディアバンクス代表取締役。埼玉新聞受験特集に執筆するほか入試関連イベント、進学情報誌の編集発行に携わる。入試関連イベントでは、さいたまスーパーアリーナで毎年夏に開催される「彩の国進学フェア」の企画のほか、テレ玉の入試特番「公立高校入試の傾向と対策」などに出演。1951年、浦和(さいたま)市生まれ。