和光市元幹部に5500万円賠償命令 高齢者専用賃貸住宅めぐる交付金不正、元幹部の不法行為など認定
埼玉県和光市の高齢者専用賃貸住宅の設置に関し、条件を満たしていないにもかかわらず国の交付金を虚偽に申請し受給を指示していたなどとして、市が元保健福祉部長(60)=詐欺罪などで懲役7年の実刑確定=を相手取り、約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、さいたま地裁で開かれ、市川多美子裁判長(代読・鈴木尚久裁判長)は約5500万円の支払いを命じた。
判決理由で鈴木裁判長は、一連の交付金申請や事業者への支払いについて、元部長が直属の部下に指示し手続きを行わせていたと認定。交付金の支払先についても、対象ではない事業者に支払うように指示したことは不法行為に当たるとした。
元部長側は、直属の部下に手続きに関する説明や指示は行っていないなどと主張していた。
判決などによると、元部長は市長寿あんしん課課長補佐として勤務していた2009年ごろから、市内にある病院の病床を減らす計画に関連し、介護療養病床付きの高齢者専用賃貸住宅の設置事業者を募集。対象事業者の建設した施設が交付条件を満たさないことを知りながら、一時的に別事業者の施設を対象として国から設置に関する交付金を受領。市に対して後で当初の事業者に交付対象を変更したと虚偽の説明をして、受領した4500万円を当初の事業者に支払うことなどを部下に指示していた。
その後、病床の転換が行われなかったことから交付決定が取り消され、市は国に対して交付金と加算金計約5600万円を支払っていた。
市は判決を受け「今回の事件が被告個人によるものとする市の主張が認められた結果であると捉えているが、市の主張が認められなかった部分もあることから、今後の対応については判決内容を十分に精査して判断する」とコメントした。
元部長は市が生活保護受給者らから預かっていた金銭をだまし取ったなどとして、19年に詐欺容疑などで県警に逮捕、起訴され、さいたま地裁から懲役7年の判決を言い渡されていた。