埼玉新聞

 

のどかな風景、今でも脳裏に 震災前のような笑顔戻って シーワン・社長、花火大会を援助 #これから私は

  • 「復興はまだ道半ば。この埼玉からできることを今後も模索していく」と話す小野澤淳一社長=草加市のシーワン本社

  • 毎年約4千発の花火が大輪の花を咲かせる広野町サマーフェスティバル(2018年、小野澤淳一さん提供)

 埼玉県草加市青柳の草加八潮工業団地で倉庫業(物流・流通加工)や段ボールなどの包装用品製造を手掛けるシーワンの小野澤淳一社長(44)。「少年時代に祖父母と過ごした福島県広野町に震災前のような笑顔と活気が戻ってほしい」と、毎年お盆前に約4千発の花火が打ち上がる「同町サマーフェスティバル」に資金援助を続けている。(足立英樹)

 同町は母・美枝子さんの出身地で、子どものころ帰省するたびに祖父母の背中にくっついて遊び回った思い出の地。のどかな田舎の原風景が今でも脳裏に焼き付いている。「先祖を敬う心やご近所付き合いの大切さなど日本人として守るべきことは大体そのときに学んだ。今の私があるのは祖父母のおかげ」と感謝する。18歳のときから墓守として年に数回同町を訪れ、町内に知り合いも増えてきた。そんな折、花火大会の主催者が協賛金集めに苦労しているといううわさを聞き、4年前からスポンサーに自ら名乗り出た。

 現在、広野町民の帰還者数は、昨年4月末時点で4247人と震災前の9割近くまで回復。毎年花火大会に合わせて一時帰省する避難者も増えており、「少しでも多く、ちょっとでも大きな花火を見せてあげたい。それで広野町の子どもたちが楽しい気分になってくれたら」と祖父母が愛した同町への思いを募らせる。

 昨年の花火大会はコロナ禍の影響で中止になった。震災10年の節目となる今年、コロナを乗り越え、町民の絆を再確認する場所として2年ぶりの開催を心待ちにしている。

=埼玉新聞WEB版=

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