埼玉新聞

 

最後に楽しい思い出を さいたまの中学校で卒業祝いに落語 生徒ら大笑い、さいたま在住の真打ちが披露

  • 登場人物の演じ分けを解説する三遊亭鬼丸さん=さいたま市立上大久保中学校体育館

 埼玉県さいたま市立上大久保中学校(堀田明良校長、生徒数517人)で12日、真打ち落語家の三遊亭鬼丸さんが3年生170人に卒業を記念して落語を披露した。生徒たちは生の落語に大笑いし、「中学時代の最後に楽しい思い出ができた」と喜んだ。同校は15日に卒業式を迎える。

 今回のイベントは同校PTA(山崎栄慈会長)が主催。本年度の3年生は、新型コロナウイルス感染症の影響で修学旅行が中止になるなど年間を通して行事が少なかった。「卒業前に何か楽しいイベントをつくってあげたい」と「上中落語」と名付けられた“寄席”が実現した。

 拍手で迎えられた鬼丸さんは「修学旅行に代わるような落語はできないので、テンション落としてお願いします」と笑わせ、「見たことのないものを一度経験してみようかという感じで45分お付き合いを」と話した。登場人物の使い分け、扇子や手拭いという小道具の使われ方について、実際に演じながら生徒たちに分かりやすく落語を解説。最も大切な「オチ」は、昔話の落語バージョンで紹介した。

 この日の演目は、古典落語の「勘定板」とオレオレ詐欺を基にした新作落語で「粗忽(そこつ)長屋」。最初は静かだった生徒たちも愉快なオチとシュールなオチの2種類の落語にすっかり夢中になった様子だった。

 鬼丸さんは最後に「受験に失敗した子がいるかもしれない。私も15歳の時はやりたいことなんて見つからなかった。でも、今日の落語のように知らないことを知る好奇心を持ってほしい。そういう力を兼ね備えてると思う」と、生徒たちにメッセージを贈った。

 初めて生の落語を聞いた野尻翔太さん(15)は「(勘定板の)方言ならではの行き違いのやり取りが面白かった。修学旅行は行けなかったけれど、中学生活の楽しい思い出になりました」と話していた。

 三遊亭鬼丸さんは長野県上田市出身、さいたま市在住。1997年に三遊亭円歌に入門、2010年真打ち昇進した。彩の国シニア応援大使を務めるほか、昨年は彩の国落語大賞を受賞。浦和区で毎年落語会を開催、FMのNACK5でパーソナリティーを務めている。

ツイート シェア シェア