埼玉新聞

 

開通は27年!トンネル貫通で“5キロ”ショートカットへ 関越道ICから伸びる延長110キロ“西関東連絡道路”の一部、無事故で喜び 岩盤を爆破する大迫力の見学会もあった 当初予定より5カ月も早く貫通、何があった

  • 無事故の貫通成功を祝し、万歳三唱する関係者=15日午前10時半ごろ、秩父市の大滝トンネル

    無事故の貫通成功を祝し、万歳三唱する関係者=15日午前10時半ごろ、秩父市の大滝トンネル

  • 無事故の貫通成功を祝し、万歳三唱する関係者=15日午前10時半ごろ、秩父市の大滝トンネル

 秩父市大滝強石から落合区間までの全長2053メートルを結ぶ「大滝トンネル」の掘削工事終了を告げる貫通式が15日、大滝地内の坑内貫通点で行われた。施工者の大林・西武・斎藤特定建設工事共同企業体(JV)、発注者の県西関東連絡道路職員のほか、県や市の関係者ら約120人が出席。工事の一区切りとなる貫通を祝うとともに、2027年度を予定している開通に向けた工事の安全を祈願した。

 同工事は、現道7キロの区間を約5キロ(10分)ショートカットして、防災力強化とアクセス改善を図ることが目的。掘削作業はJV作業員が22年5月に開始し、24時間30人体制で、大滝から山梨県方面へ1日約7・2メートル掘り進め、今年3月19日午前10時ごろに貫通させた。長さは釜伏トンネル(寄居町)、大峰トンネル(秩父市)に次いで県内3番目。

 式典は、最初に「貫通の儀」を実施。北堀篤秩父市長、新井豪、阿左美健司両県議、栗原稔県道路利用者会議名誉会長らが発破スイッチを押すと、トンネル出口にかけられた暗幕が降り、会場は明るい日差しに包まれた。

 その後、貫通点に酒をまく「清めの儀」や、無事故で貫通が成功したことを祝う万歳三唱などが行われた。出席者には、トンネル貫通時の最後に掘られた岩片「貫通石」が配られた。貫通石は、「石(意志)を貫く」として、安産、受験合格、大願成就などのお守りに古くから重宝されているという。

 JV作業員は現在、坑内のコンクリートの壁を仕上げる「覆工コンクリート」の作業を進めている。JVの古家義信所長(47)は「これからは人の目に見える部分の作業が続くので、最後まで気を抜かず、きれいに、安全第一で仕上げていく」と話していた。

■地域の防災力強化に

 大滝トンネルは、関越自動車道花園インターチェンジ(深谷市)と新山梨環状道路(山梨県)を結ぶ、延長約110キロの西関東連絡道路の一部。開通後は走行時間の短縮や安全性の向上、観光地へのアクセス改善など多くの効果が期待できる。

 大滝区域の国道140号線現道は、急斜面の山麓を切り開いた道路のため、カーブが連続し、落石や岩盤崩落事故などが多発している。トンネル建設で危険な区間をショートカットすることで、災害に強い道路となり、交通事故の減少と地域の防災力強化につながる。

 掘削工事の現場には、地元小学校の児童や、県内外の学校関係者ら、これまでに計2千人以上が見学に訪れ、岩盤を爆薬で壊す大迫力の作業を目の前で味わった。見学者からは「早く開通してほしい」など、期待の声が多く集まった。

 掘削現場は、土の硬さが良好だったこともあり、当初見込んでいた貫通時期よりも5カ月ほど早く終わらせることができた。古家所長は「ベテランと若手作業員の連携がうまくかみ合い、途中で工事が止まるようなトラブルや事故は起こらなかった」と振り返った。
 

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