涙あふれた母、脳死の息子から心臓の音…高校生らの車、猛スピード事故で2人死亡 悔しくて悔しくて悔しい
鴻巣市で2019年12月に4人が死傷した事故で、高速度で走行し運転操作を誤ったとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた、当時18歳の少年(19)の論告求刑公判が22日、さいたま地裁(田尻克巳裁判長)で開かれた。検察側は「危険かつ無謀な運転で、過失は極めて重く結果は重大。刑事処分が相当」として、懲役4年以上6年以下の不定期刑を求刑。弁護側は保護処分を求めて結審した。判決は5月6日。
起訴状などによると、少年は19年12月13日午後0時20分ごろ、鴻巣市郷地の県道で、制限速度を78キロ超える約118キロで車を走行。運転操作を誤って道路左のガードレールと油圧ショベルに衝突させ、後部座席に乗っていた本庄市の男子高生と深谷市の男子高生=いずれも高校3年、当時(18)=を死なせるなどしたとされる。
■遺族「実刑判決を」
公判では、事故で死亡した本庄市の男子高生と深谷市の男子高生の遺族が涙ながらに意見陳述し、「死ぬまで償ってほしい」「実刑判決を望む」と厳しい処罰を求めた。
本庄市の男子高生の母親は遺体の顔を確認する際、警察から「見たら倒れてしまう」と言われ、見せてもらえなかったことを明かし、「健康で五体満足に産んだのに。息子より私が先に天国に行くはずだった。悔しくて悔しくて悔しい」と言葉を絞り出した。
少年に対しては、「あなたは(事故のあった)12月13日に家に帰ったよね。息子は7日たって骨になって帰ってきた」と述べ、「あなたが死ぬまで、もう一度息子と会うまで償ってほしい」と語った。
深谷市の男子高生の母親は息子が脳死と判定され、臓器提供を決めた後、手術前に医師から「息子の心臓の音を聞いてください。話しかけているようだ」と言われ、胸に耳を当てたことを回顧。「泣かないと決めていたのに思わず涙があふれた。このまま聞いていたかった」とこぼした。
最期をみとった後は「母なのに何もしてあげられなかった。私の心は死んでしまった」と複雑な心境を吐露。少年が時速118キロで運転したことに、「故意の事故と変わらない。執行猶予などではなく実刑判決を望みます」と話した。