<熊谷小4死亡ひき逃げ>時効まで半年、母親が情報提供を呼び掛け ブログも開設 真実を追い続けた9年半
熊谷市で2009年9月、小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が死亡した未解決のひき逃げ事件は、30日で公訴時効まで半年になる。
ここにきて、証拠品の腕時計紛失が明らかになるなど、事態は混沌(こんとん)としてきているが、母親の思いが変わることはない。「犯人の口から真実を聞きたい」。事件解決を願い、情報提供を呼び掛けている。
「ここで孝徳は事故に遭ったんです。どうしてなのか…」。事故現場に立つ小関君の母親の頭に、疑問が次々に湧いてくる。
「2台の車にひかれたのではないか」「前方の信号が青なのを見て、車はスピードを上げたのか」「(車の進行方向)左側に別の車が停車していて、それを避けようと膨らんだところで事故に遭ったのではないか」-。想像はできるが、誰も答えることはできない。逃走車両の運転手を除いて…。
事故が起きたのは09年9月30日午後6時50分ごろ。小関君は自転車で帰宅途中に、熊谷市本石1丁目の市道で事故に遭った。その後、逃走車両につながればと母親は事故現場に立ち、通行車両のナンバーをチェック。県警に情報提供してきた。
しかし事件は解決しないまま、16年に道交法違反(ひき逃げ)罪の時効が成立。自動車運転過失致死罪(当時)の時効も今年9月に迫っている。
■切実な思い
そんな中、信じ難いことが発覚した。県警が証拠品として預かっていた小関君の腕時計を紛失していたことが明らかに。さらに紛失を巡って書類の破棄や虚偽の文書を作成していた疑いが浮上し、県警が捜査している。
県警の捜査に協力してきた母親にとって、耳を疑うような出来事。「事件の初動捜査もずさんだったのではないか」。そんな疑問も抱くようになった。
一方で、腕時計の紛失を機に事件に関する報道が増え、若い人の中には「(ひき逃げ事件を)初めて知った」という声も。母親にとっての本題はひき逃げ事件。「時効が刻一刻と迫っている。ひき逃げ事件にもっと関心を持ってもらえたら」。切実な思いを打ち明ける。
■何があったか知りたい
ひき逃げ事件に関する捜査は今も続いている。県警によると、熊谷署に特別捜査班を設置し、専従の捜査員15人を配置。提供のあった情報の捜査や防犯ビデオの解析などを進めているという。
母親も新たな行動を起こし始めた。今年に入り、ブログを開設。事件に関する情報を発信し、広く情報提供を呼び掛けている。
今月9日には元警察官で、仙台市で交通事故の調査会社を経営している佐々木尋貴さんと一緒に現場を改めて確認。今後は事故の状況をシミュレーションした映像を作成して、さらなる情報提供を呼び掛ける予定だ。
「(事故が起きた)あの時、何があったのか。孝徳はなぜ亡くなったのか。それを知っているのは犯人だけ。それが知りたい」。母親が発生当初から抱く疑問。その答えを探し続けて、9年半が過ぎた。
「秘密を抱えて生きるのは難しく、誰かに何かを必ず話していると思う。ちょっとしたことでもいいので、情報を寄せてほしい。そして、犯人には自らの口で真実を語ってほしい」
公訴時効の9月まで、母親の思いは変わらない。
母親はブログ(https://ameblo.jp/kosekitakanori/)で情報を発信している。