埼玉新聞

 

<新型コロナ>埼玉・八潮の熊乃前鋼材、開発したマスクツリー好評 自社ブランド「KATTEDO」強化へ

  • シンプルで置く場所を選ばないデザインの「Mask Tree」=八潮市内の熊乃前鋼材

 新型コロナウイルスの感染が拡大し始めて1年が経過し、埼玉県内の各企業はそれぞれ受けた影響への対策を打ち出している。一般鋼材の販売加工を行う熊乃前鋼材(八潮市)は受注減に苦しむ中、加工技術を応用することで初の自社製品「Mask Tree」(マスクツリー)を開発。「コロナ禍で欠かせないマスクの一時保管に便利」とユーザーからも好評だという。

 同社は1958年創業。強みは「プレーナー加工」と呼ばれる技術で、鋼板を曲げる際に折り曲げ部分に溝を掘ることで、緩やかな曲がりではなく角を作ることができる。誤差は大きくても0・3ミリ。技術の習得に4~5年かかる。高い技術を生かして、主に有名ブランド店舗の看板やショーケースにはめ込む金属枠の加工などを中心に手掛ける。

 昨年4月以降は、新型コロナ感染拡大の時期と閑散期が重なった。余裕ができた時間で社員主導の自社製品アイデアの検討を開始。8月に新たに企画開発部組織し、自社ブランド「KATTEDO」を立ち上げた。

 創業以来初となる自社製品「Mask Tree」は「洋服と同じようにマスクを保管するハンガーが欲しい」という社内の声から制作がスタート。約半年間デザインや機能性など試行錯誤を繰り返し、今年1月に完成した。

 販売している製品は職人による手作り。白と黒の2色展開で、オンラインストアなどで購入可能。価格は3980円(税込み)。販売開始の2月から4月中旬時点で、すでに250個ほど売り上げた。製品を通して自社の技術力のPRにもつなげたい考えで、今後も継続的に自社製品の開発を行い、ブランド力の強化を目指す。

 青木秀一社長は「コロナ禍の今だからこそ、新しいステージへ行きたいという気持ちで、全社員が強い意志を持って作り上げた」と話し「職人による熟練の技術でマスク生活がより豊かになってくれたら」と期待をにじませた。

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