埼玉新聞

 

秩父中央病院、4月から入院中止 医師やスタッフ不足続く 外来・訪問診療などに重点

  • 4月から入院機能を中止して診療所へ移行する秩父中央病院=秩父市寺尾

 秩父地域で唯一、精神科の病床がある秩父市寺尾の秩父中央病院が4月から、入院機能を中止して診療所へ移行する。医師やスタッフ不足が続いており、入院や外来の診療の質を保ち続けることが困難になったことが大きな要因。

 国も精神科病床を減少させる政策を進めているが、患者の家族には負担も広がっている。

 精神障害への偏見や過去の隔離収容政策の影響で、日本の精神医療は国際的な遅れや人権侵害が指摘されている。人口当たりの精神科の病院ベッド数は先進国最多で、患者の平均入院日数も突出して長い。

 厚生労働省の2017年度調査で、入院患者は全国で約28万4千人に上り、約5万5千人は入院期間が10年以上だった。手足をベッドにくくり付けるなどの身体拘束を受けた患者は1万2千人強。施錠された部屋に隔離された患者も1万3千人近くおり、いずれも10年間で2倍近く増えた。

 秩父中央病院によると、診療所になっても移転はせず、現在の場所で外来診療を実施。デイケアや作業療法室での活動を継続するほか、訪問看護も訪問看護ステーションとなり、継続していく。

 訪問診療(往診)も始める予定で、4月からは外来診療を午後も行う予定。歯科診療は継続するが、内科外来はなくなるという。

 同病院は方針変更で入院を縮小し、外来・訪問診療や地域生活支援に重点を置くこととなり、17年4月に新入院の大部分に対応してきた精神一般病棟を休床していた。

 同病院は「地域全体の医療スタッフ不足や人口減少などの現状を考えた上で、秩父地域に一つしかない精神科医療機関として長く地域に役立つために決断した。秩父地域で精神科医療やケアを受けられ、患者がなるべく入院しないで自分らしい生活が続けられるよう努力していきたい」としている。

 同病院の診療所移行については市議会3月定例会でも取り上げられた。

 議員から精神疾患患者の対応や市立病院での精神科設置について問われた市側は「現在、精神科医療は外来対応が主流であり、日頃より定期受診を励行し、病状の悪化を防ぐよう心掛けてもらうことも必要。市立病院での精神科設置は非常に要件が難しい状態」と答えた。

 同病院から別の病院への転院を余儀なくされた患者の家族は遠方の病院まで定期的に通うことになり、体力的な負担も大きくなったと明かした。

 「精神障害は誰にでも起こり得る病気ではあるが、現在も社会の偏見があるので、声が上げにくい。地元では暮らせなくなったということで、行政には声なき声をくみ上げて、対策を講じてもらいたい」と話していた。

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