団員いなくなり活動休止…浦和高の応援団、存続の危機から復活 視覚への訴え意識、新しい応援の形見せる
団員不在で存続が危ぶまれていた県立浦和高校(水石明彦校長)の応援団が今年3月、復活した。82期団長に就任した3年生の高橋悠馬さん(17)は、1年次の夏に退団したが、OBや同級生らの支援を受け復帰。コロナ下での新たな応援様式を模索しながら練習に励み、きょう9日、県立川越高校で開催される県合同演技発表会の舞台に立つ。
70年の歴史を持つ同校応援団は昨年6月、当時の3年生が引退以降、団員がいなくなり存続の危機となっていた。高橋さんは入学時、勧誘で目にした応援団の演舞姿に憧れて入団。しかし、同期が次々と去り、学年で1人になりながらも活動を続けたが体調を崩し、悩み抜いた末に退団した。その後、新型コロナが猛威を振るう中で新たな団員は入らず、応援団は活動休止に追い込まれた。
「自分が残ってさえいれば」と自責の念に苛(さいな)まれた高橋さん。顧問の塩原壮教諭から、復帰を打診されたときは「浦高にはやはり応援団が不可欠。体も回復していたので、『一度やめた者が戻ることを許されるのなら』と迷わず答えた」と明かす。
3月に復帰したものの、以前のように声をからして叫び、鼓舞できない。その代わりより大きく見える角度や動き、強い目力など視覚への訴えを意識し、練習に励んだ。
4月中旬、同校体育館で春季大会などに臨む運動部の壮行会が行われた。これまでは肩を組み大合唱してきた応援歌「八重雲起る」は録音放送だったが、大きく腕を振り、マスクの内側で食いしばる口元が見えるような高橋さんの演技に、生徒や教諭らから惜しみない拍手が送られた。同校野球部の河内祐大主将(17)は「プレッシャーがあると思うが、野球部も一丸となって応援している。自信を持ってほしい」と力を込めた。
9日に開催される県内の伝統校6校の応援団による演技発表会「日輪の下に」。46回目の今年は無観客で開催される。週末に大阪から日帰りで指導を続けた三沢誠也さん(23)を含むOB5人と共に初めての発表会に挑む高橋さん。かつて復帰を志し動画投稿サイト「ユーチューブ」で一人、型や演舞の練習に励んでいたときの“お手本”だった先輩たちと同じ舞台に立てるのは「夢のよう」と話す。
今年入団した1年生3人とも力を合わせ「伝統ある従来の形を踏襲しつつ、新しい応援の形を見つけていきたい」と意欲を見せた。