小1女児が重体…車にはねられる 運転していた男性、赤信号を無視「先の信号を見て、目の前の信号を見ておらず」 悲しむ高齢者、免許返納できず苦悩…車が生活に欠かせずため息、運転していると「ひやひや」
熊谷市で4日、小学1年生の女の子が84歳の男性が運転する車にはねられ、重体となる事故が発生した。高齢者が加害者や被害者となる事故は後を絶たない。県警交通総務課と熊谷署は10日、熊谷市の老人福祉センター「上之荘」で出張型の交通安全教育を実施。センターを利用する高齢者ら約40人が運転免許証の自主返納などの交通アドバイスに真剣に耳を傾けた。自らも事故を起こすかもしれない不安と、日常生活に欠かせない車の必要性。高齢者の苦悩は深かった。
■65歳以上が3割
県警によると、県内では今年、6月12日までに6978件の交通事故が発生。死者数は40人で全国7番目に多く、65歳以上の高齢者が3割を占めた。また、事故当事者のうち過失が重い「第1当事者」が高齢者だった事故は4月までに1227件発生。うち2件は高齢者が車を運転していた際の死亡事故で、速度や前方不注意の違反があった。
県警交通総務課は交通アドバイスで、免許返納者に運転経歴証明書を交付する「シルバー・サポーター制度」を紹介。「身分証になり、制度に協賛する店舗で割引を受けられる」とアピールした。歩行中や自転車での事故についても、反射材や自転車ヘルメットなどで対策を呼びかけた。
4日の事故では、84歳の男性が運転する軽貨物車が赤信号を無視し、横断歩道を歩いていた小学1年生の女子児童に衝突した。捜査関係者によると、男性は「先の信号を見ていて、現場の信号を見ていなかった」という趣旨の話をしており、今年3月に免許更新をした際には認知機能などに問題はなかったという。
■買い物にも窮する
県警の交通安全アドバイスを聞いた櫛田紀子(ともこ)さん(84)は「4年前に孫に強く促されて免許を返納した」と明かす。現在は主に電動機付き自転車で移動し、「車を運転しなくても平気」と以前にも増して活動的になった。また、熊谷市の男性(73)は「以前から運転免許は持っていない」と話し、「自転車ヘルメットは必要」と購入を検討していた。
一方で、郊外での交通手段として車を手放せない高齢者もいる。嵐山町に住む女性(76)は熊谷市での事故について「知っています」と沈痛な様子だが、「車なしでは行動範囲が狭まってしまう」とため息をつく。年齢の影響か、夜間や悪天候の日は視界が悪く、車道を走る自転車には「ひやひや」する。高齢の夫とともに免許を返納すれば買い物にも窮すると想像するが、「いつかは返納しなければ」と考えている。
熊谷署の潮田雅昭交通課長は交通安全アドバイスで「日常生活に車が必要であることはよく承知している。ただ、小学生が信号無視の車によって大けがを負う事故が発生した。もう一度、免許返納について考えてみてほしい」と訴えた。