死亡率半減?狭山茶食べ、幻の高級地鶏 うまみもしっかりと評判 タマシャモを県立高で養鶏、商品化
県を代表する高級地鶏「タマシャモ」。ごく少数の農家のみが生産し、取扱店も限られる幻の地鶏だ。そんなタマシャモを養鶏する高校生たちがいる―。卵のふ化から出荷、商品開発・販売まで生徒が携わる授業を行うのは、川越総合高校(川越市)。飼料に狭山工業高校(狭山市)が生産する和紅茶の茶葉を混ぜ、商品のパッケージデザインを蓮田特別支援学校(蓮田市)が手がけるなど、学校の枠を超えて高校生が活躍の場を広げる。6月中旬には本年度のヒヨコのふ化が始まった。
■授業で80羽を飼育
タマシャモは1984年に県養鶏試験場(現・農業技術研究センター)がつくった鶏で、現在は県内2戸の養鶏農家のみが生産。川越総合高では、同センターの卵を使い、2、3年生が「飼育」や総合的な探求の時間の授業で、ふ化から出荷、販売までを学んでいる。
授業では卵のふ化を年2回行い、前半の今回は80羽のヒヨコが生まれた。生まれたばかりのヒヨコは寒さに弱いため、育雛室(いくすうしつ)と呼ばれる保温された箱の中で3~4週間を過ごす。本年度の3年生は飼育担当9人、商品開発担当4人で、2年次に「飼育」の授業を受けていた生徒も多い。
2年次にもタマシャモを育てた同校3年の真田逢月さん(17)は「(出荷で)箱に詰め込むときに嫌がるのを見るのはつらい」としながらも「タマシャモが成長していく姿は見ていてうれしかった」と振り返る。
■茶葉で死亡率半減?
タマシャモの飼料は同校で栽培するコメや野菜が中心で、昨年度からは、実業高校同士のコラボとして、狭山工業高で生産している狭山茶を使った和紅茶「狭紅茶(さこうちゃ)」の茶葉も配合している。
川越総合高によると、狭紅茶を与えたタマシャモは死亡率が半減し、以前は30羽ほどだったタマシャモの出荷量が、約60羽まで増えたという。同校では、茶葉がタマシャモの健康や死亡率にどのように影響しているかについて、本年度の授業で対照実験などを通じて調べる予定だ。
また、タマシャモのふんを狭紅茶の茶畑の肥料にするための取り組みも進んでいて、川越総合高の生徒が狭紅茶の茶摘みを手伝うなど、生徒間の交流も広がる。狭山工業高3年の豊川洋斗さん(17)は「他校とのコラボで、狭紅茶も有名になって広まってくれれば」と期待する。
■広がる川越総合高産
他校とのコラボでは、今月から入間わかくさ高等特別支援学校(入間市)の生徒が運営する「カフェわかくさ」で、川越総合高産のタマシャモを使用したカレーの販売も開始。川越総合高が開発した「タマシャモ炊き込みご飯」などの商品パッケージには蓮田特別支援学校生のアート作品を使用するなど、高校生が学校の枠を超えて活躍する。
また、今年から川越市内の飲食店「すき鍋鳥もと」で、川越総合高産タマシャモの鳥しゃぶが1日2人前限定で提供されている。同店の店長山崎利貴さん(28)によると、うまみがしっかりしていて、出汁がよく出るのが特徴だといい、「客からの評判も良く、『川越総合高校すごいね』と言われる。リピーターも多い」という。
タマシャモは140日以上かけてじっくり育てられる。今月ふ化した川越総合高のタマシャモは、今年10月ごろ出荷される予定だ。