埼玉新聞

 

親権者になれない…パートナーの子、一緒に育てても 切実な声、マルイで埼玉初“いいふうふ”になりたい展に寄せられる LGBTQ当事者ら困難多く「妊活したくても補助金どころか生殖医療すらできない」

  • 当事者の日常や困り事を紹介するパネル展示など=23日、草加市の草加マルイ

    当事者の日常や困り事を紹介するパネル展示など=23日、草加市の草加マルイ

  • 草加市観光大使「パリポリくん」と共に展示会を盛り上げる岩井紀穂さん(右)ら

    草加市観光大使「パリポリくん」と共に展示会を盛り上げる岩井紀穂さん(右)ら

  • 当事者の日常や困り事を紹介するパネル展示など=23日、草加市の草加マルイ
  • 草加市観光大使「パリポリくん」と共に展示会を盛り上げる岩井紀穂さん(右)ら

 草加市で21~23日、性的少数者(LGBTなど)のカップルのありのままの姿や制度の課題を紹介する「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」が県内で初めて開催された。主催団体の一つで、昨年7月に結成された当事者団体「スカイツリーラインLGBTQフレンズ」(草加市)の岩井紀穂(かずほ)代表は「LGBTを含め、それぞれがのオリジナルの幸せを追求できる社会であってほしい」と展望を語った。

 会場では同性婚に関するシール投票で、約140枚のシールが賛成側を埋め尽くした。市内に住む6歳の女の子も、岩井代表から「女の人同士、男の人同士とか、いろいろなカップルがいるよね。いいと思う?」と聞かれ、うなずいて賛成にぺたり。見守った女の子の母親(37)は「職場には同性カップルに関する社内規定があり、『レインボープライド』のイベントにも参加している。同僚にも当事者がいる」とほほ笑んだ。

 展示会は同団体と、これまでに全国27カ所で展示を行ったNPO「カラフルブランケッツ」が主催。各カップルが寄り添う写真のパネルでは、共に生きる喜びと、法的な婚姻関係でないことによる不安が手書きメッセージから伝わる。万が一の時に備える遺言や後見制度も紹介されたが、「外国人パートナーが配偶者として在留できない」「パートナーの子どもを育てていても一緒に親権者になれない」など困難は多い。

 全国の当事者は「妊活したくても補助金どころか生殖医療すらできない」「サービスを受けられないのが当たり前になっている」と切実なメッセージを寄せた。

 展示で目を引くのは虹色のウエディングケーキの模型で、頂点には「78%」という装飾が輝く。2019年の調査で同性婚法制化に賛成した人の割合を表している。共催のNPO「レインボーさいたまの会」の川崎しょうさん(53)は「これまで近県での開催には行けず、ずっと展示を見たいと思っていた」と目を細め、「仲間の困り事を共有することも当事者としての責任」と意義を強調した。

 「『(他者の性自認や性的指向を暴露する)アウティングをしてはいけない』などの知識が広がっている。同性婚について『認めない理由が見つからない』と考える学生もいる」と話すのは、スカイツリーラインLGBTQフレンズのメンバーで県外の大学に勤める長野慎一さん(46)だ。「大人の世代も考えをアップデートする必要があると感じる」とした。
 

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