埼玉新聞

 

<新型コロナ>埼玉まん延防止、13市町で解除「もう要請従えぬ」「我慢の限界。選手村の飲酒納得できず」

  • 55日ぶりの営業再開へ、開店準備をする「ありがたや」店主の小林信夫さん=21日、川越市

 県内では21日から、さいたま市と川口市を除く13市町のまん延防止等重点措置を解除し、飲食店で条件付きでの酒類提供を認めた。「ここからが再スタート」。各店舗からは歓迎の声が上がる一方で「緩和されても足元は厳しい」「提供の条件がきつく、収益につながらないのではないか」と窮状を訴える、苦しい経営状態はしばらく続くことが予想される。

■解除

 措置区域から外れた川越市や越谷市などでは午前11時~午後8時のうちの90分間で、4人以下または同居家族(介助者含む)のみのグループに限って酒類提供を認める。川越市の居酒屋「ありがたや」では21日の午後4時、同市にまん延防止等重点措置が適用された4月28日以来、55日ぶりに営業を再開した。店主の小林信夫さんは「ここから再スタート。ようやくお客さんと会える環境が戻りかけているが、不安の方が大きいのが正直なところ」と語った。

 越谷市内の飲食店街では、18日時点で全体の約半数の店舗が休業していたが、複数の店舗が21日から営業を再開した。再開準備に追われる店主は「客足が戻らないのではないかと不安」「お客さんのためにも要請を守って安心してもらうしかない」などと話す。

 中には措置の解除を待たずに酒類を提供する店舗も見受けられた。店主は「5月まではずっと要請に従ってきたが、もう限界にきている。これ以上要請通りに店舗運営するわけにはいかない」と話す。「40年間この店に立ち続けているが、罪悪感を抱いたのは初めてだった」と葛藤を口にした。

■継続

 一方、措置が継続されるさいたま市と川口市では、午前11時~午後7時のうちの90分間で、1人または同居家族(介助者含む)のみのグループに限って酒類提供を認める。

 「居酒屋 おたふく」(さいたま市南区太田窪2丁目)は21日以降も営業自粛を続け、弁当販売でしのいでいく。同店の50代男性は「うちのお客さんは会社員が多いので、帰宅時間を考えると、酒提供が午後7時まででは厳しい。少なくとも午後9時にならないと、再開は難しい」と話す。

 今年に入っての店舗営業は、緊急事態宣言が解除された約1カ月にとどまる。「酒店など取引先の支援が少なく、飲食店への支援金も減っている。飲み屋だけが悪いという印象。もう我慢の限界で、今月に入り酒提供を始めた店も多い」。東京五輪・パラリンピックの開催で感染が再拡大するのを危惧しており、「選手村で飲酒できるというのは納得がいかない。だらだらやらずに、強い姿勢で対策を取って、晴れて解除した方がいい」と訴えていた。

 さいたま市内でカフェやバーなど複数の飲食店を持つ経営者は「一見、規制が緩和されているように見えるがこの条件では収益はほとんど見込めない。この時間帯の1時間の差はかなり大きい」とした。

■対応

 酒類提供の再開に、酒卸業者は対応に追われた。県内居酒屋を中心に業務用酒を卸している県南部の事業者では、21日に向けて取引先からの発注の問い合わせが相次いだ。担当者は「18日時点で、問い合わせ数は前週の倍以上。新型コロナ感染拡大前の7割ほど」と話す。

 しかし、先行きの不透明感から今年1月から新型コロナ感染拡大前の3割程度に抑えている在庫は当面変更しないという。「日本酒は夏の需要が低く、割り材に使われるソフトドリンクなどは賞味期限が比較的短い。コントロールが難しくロスになるとかなりの痛手なので、保守的な姿勢にならざるを得ない」とした。

ツイート シェア シェア