外食産業、外出やインバウンド需要拡大で堅調な売上 食の安全や人手不足対策など語る 日本フードサービス協会初の女性会長 久志本京子氏
全国約450社の外食企業が加盟する一般社団法人日本フードサービス協会。今年10月の設立50周年を前に「がってん寿司」や「かつ敏」などを運営するアールディーシー(熊谷市)の久志本京子会長が初の女性会長に就任した。外出機会やインバウンド需要の拡大で2024年4月の業界売上は前年対比で106・0%と堅調(同協会調べ)。食の安全や人手不足対策、業界の展望などを聞いた。
―会員の要望は何が多いか。
「慢性的な人手不足を背景に外国人材の活用や交流サイト(SNS)の効果的な発信など企業の持続的発展に関する相談が多い。近年ではカスタマーハラスメント(客からの暴言やクレームなどの迷惑行為)に関する悩みも増えており、九つの委員会で研修・情報共有に努めている」
―初の女性トップとして独自色をどう打ち出すか。
「外食産業で活躍する半数以上が女性。私もパートタイマーから始まり30数年間、さまざまな立場を経験してきた。会員企業でも女性幹部が増えており、私の経験が少しは皆さまの参考になればうれしい」
―食の安全安心に向けた取り組みは。
「お客さまに店舗を安心してご利用いただくには従業員の健康管理や衛生管理の徹底が大前提。食中毒の防止はもちろん、食品表示などのコンプライアンス(法令順守)も企業のブランド価値を左右する重要事項だ。05年7月から外食における自主的なガイドラインを策定し原産地表示を推進している」
―人手不足対策は。
「私たちは多様な働き方で社会にたくさんの雇用を提供してきたが、現在は人手不足にあえいでいる。配膳ロボットや自動発注システムなどのデジタル化による生産性向上はもちろん、パートタイマーの年収106万円の壁(厚生年金適用拡大)など生活圧迫につながりかねない課題については、実情に即した環境整備を今後も政府に提言していきたい」
―外国人材の活用は。
「18年の入管法改正で新たな在留資格が創設され、外食産業は外国人が日本国内で就労するための新たな在留資格(特定技能1号)の対象となった。今年3月には家族の帯同や在留期限に上限がない(特定技能)2号試験も始まり、外国人材の雇用も進むだろう」
―インバウンド需要の高まりで外国人観光客に日本食が空前の人気だ。
「JRO (日本食レストラン海外普及推進機構)と協力して海外で日本食材のマッチング商談会などにも注力している。日本人のおもてなしの精神や食文化は世界に誇れるコンテンツ。さらなる発展のため情報発信に努めたい」