埼玉新聞

 

西島秀俊、米国へ本格進出 ロボットとの演技で「未開拓の心の領域」 アップルTV+ドラマ「サニー」

  •  西島秀俊とロボットの「サニー」=東京都千代田区

     西島秀俊とロボットの「サニー」=東京都千代田区

  •  ドラマ「サニー」より。俳優が遠隔で演じた表情が、同時にロボットの顔部分に表示される手法で撮影した(画像提供 AppleTV+)

     ドラマ「サニー」より。俳優が遠隔で演じた表情が、同時にロボットの顔部分に表示される手法で撮影した(画像提供 AppleTV+)

  •  ドラマ「サニー」より(画像提供 AppleTV+)

     ドラマ「サニー」より(画像提供 AppleTV+)

  •  「京都の真ん中で撮影したのは驚くべきこと」と語る西島秀俊=東京都千代田区

     「京都の真ん中で撮影したのは驚くべきこと」と語る西島秀俊=東京都千代田区

  •  西島秀俊とロボットの「サニー」=東京都千代田区
  •  ドラマ「サニー」より。俳優が遠隔で演じた表情が、同時にロボットの顔部分に表示される手法で撮影した(画像提供 AppleTV+)
  •  ドラマ「サニー」より(画像提供 AppleTV+)
  •  「京都の真ん中で撮影したのは驚くべきこと」と語る西島秀俊=東京都千代田区

 俳優の西島秀俊が出演する、米動画サービス、アップルTV+(プラス)のドラマ「サニー」(全10話)の世界配信が7月10日に始まった。ロボットが普及する京都を舞台に、近未来的なテクノロジーと古くからの日本文化が融合した、一風変わったミステリースリラーだ。「未開拓の心の領域を感じられた」と言う西島にとって、本格的な米国進出となる本作や、米映像産業で日本人の活躍が広がる現状への思いを聞いた。

 

 京都に住む米国人女性のスージー(ラシダ・ジョーンズ)は、飛行機事故で夫のマサ(西島)と息子が消息不明になり、人生が一転する。マサが勤務する電子機器メーカーから新型家庭用ロボット「サニー」が届き、スージーは反発しながらもサニーと「友情」を育み、家族の身に何が起きたのかを探っていく。

 日本在住のアイルランド人作家コリン・オリバンの小説「ダーク・マニュアル」を、2023年の米アカデミー賞で「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞などに輝いた独立系スタジオ「A24」制作で映像化。西島に加え、ジュディ・オング、YOU、国村隼、annie the cllumsyら多数のキャストが日本から参加している。

 中核的な脚本家であり、現場を取り仕切る「ショーランナー」も務めたケイティ・ロビンズが、当初より西島をマサ役の第1候補に。西島が主演し、米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」が劇場公開された2021年ごろには、キャスティングの打診が始まっていたという。

 「ケイティや、制作総指揮・監督のルーシー・チェルニアク、ラシダと、『Zoom』(ビデオ会議システム)のミーティングをしたいと話がありました。その場ですぐ、ラシダと本(台本)読みをしたんです。想像していたよりはるかに楽しく、2人で噴き出しながら読み合わせを進めました。英語での演技もありますが、その前段階で、気持ちがつながりあえた」

 その後、2022年にアカデミー賞授賞式でロサンゼルスを訪ねた西島は、制作陣と対面。「その場で『ぜひお願いします』と言いました」

 撮影は日本の京都と東京で行われた。京都では清水寺近くの二年坂のような観光名所や、国立京都国際会館も映る。西島は、掃除ロボットを相手に対話を続けるシーンにも挑んだ。

 「一人芝居だと思っていたのですが、愛情を投げかけると、相手からも返ってくるように感じるんですよね。人の元々持つ能力なのか…。本当に不思議でした。(ロボットの音声は)リアルタイムで出るのですけど、思ったよりもはるかに気持ちが揺さぶられ、自分でも驚きました」

 

 ショーランナーを擁する、米国のテレビシリーズの制作態勢に、日本との違いも感じた。

 「ぎりぎりまで作品をより良いものにする姿勢を感じました。撮影前も、撮影が始まってからも、脚本がどんどん変わっていくんです」

 ロボット開発に携わっていたことを妻スージーに隠していただけでなく、どこかダークな部分もうかがわせるマサのキャラクターも、この過程で徐々に作られていったものなのかもしれない。

 「新しい脚本が来るたびに、あれ? マサはこんな人だったのか、こんなこともするのかという驚きありました。ケイティが、僕が演技をしたり実際に会って話したりするのを見て、マサのいろんな面を出してくれたのだと思います」

 レトロと未来を両立させた美術やロボットのデザイン、テレビ番組など日本のサブカルチャーや風俗をよく研究した演出も秀逸で、日本の視聴者にとっては、見慣れたはずの物が新鮮に映るはず。コメディータッチでありつつ、SFやサスペンスの要素もある作品だが、メッセージ性も豊かと西島は強調する。

 「いろんな要素がごちゃまぜになったエンターテインメントですが、回が進んでいくごとに、人と人とのつながり、人とは何か、魂とは何かという深いテーマにつながっていく。そこがすごく面白いです。演じる側でしたけど、いろんなことを感じる現場でした」

 近年、1990年代の東京を舞台に、アンダーグランドの世界を描いた「TOKYO VICE」や、俳優の真田広之が主演とプロデューサーを務めた戦国時代劇「SHOGUN 将軍」など、米国から、日本を舞台にした作品が相次ぎ登場している。

 「日本の文化や価値観に、とても興味が持たれていると感じます。米国や他国にはない美意識や価値観があり、それが、もしかしたら未来の希望になる可能性を感じているのかな。作品を通して、日本独自の文化が広がっていくのは、とても良いことだと思います」

 海外を舞台にした活躍が、今後も期待される西島。ビジョンを尋ねると「自分のキャリアもそうですが」と、若手を引き上げる責任感も明かした。「(サニーの出演は)刺激的でしたし、自分自身も新しい、未開拓の感情や、心の領域を感じることができました。また自分の中の、未開拓の部分を探索していきたい。とにかくチャンスがあれば、いろんなことに挑戦したいです。これからの日本の若い俳優の皆さんに、自分が何かやれることがあればドアを開けていきたい。情熱を持つ若い人たちと一緒に可能性を広げていけたらと思います」

(共同通信=加藤駿)

 ※「サニー」は7月10日に1~2話配信、以後9月4日まで毎週水曜に1話ずつ配信。

ツイート シェア シェア