埼玉新聞

 

「感性豊かな栄一さんを身近に感じて」 大河ドラマ「青天を衝け」脚本・大森美香さん、渋沢栄一を語る

  • 大河ドラマ「青天を衝け」や渋沢栄一について語る大森美香さん=東京都内

    大河ドラマ「青天を衝け」や渋沢栄一について語る大森美香さん=東京都内

  • 大河ドラマ「青天を衝け」や渋沢栄一について語る大森美香さん=東京都内

 2021年放送の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK)の脚本家・大森美香さんがきょう14日、埼玉県深谷市の深谷市民文化会館大ホールで開かれる「新一万円札発行記念・渋沢栄一凱旋帰郷~青天を衝くスペシャルトークin深谷」に出演する(観覧募集は終了)。

 同イベントには、渋沢栄一役の吉沢亮さん、渋沢なか役・村川絵梨さんも登場。ドラマを振り返りながら、渋沢栄一の人間性や故郷・深谷血洗島への思いなどを語る予定だ。

 今月3日の新紙幣発行を契機に、改めて注目を集める渋沢の生涯。作品を通じて多くの国民に勇気と感動を届けた大森さんに、当時の思い出や渋沢の魅力などを聞いた。

 渋沢栄一を身近な人物に―。2018年春、NHKから大河ドラマの脚本執筆の打診を受けた。幕末を題材にしようと構想を練る中、渋沢栄一も候補の一人に挙がっていた。そして19年4月に飛び込んだ「新1万円札の肖像に渋沢が決定」というニュース。作品にする大きな決定打となった。

 15年後期の連続テレビ小説「あさが来た」で渋沢を初めて描いた。「栄一さんは不思議な人物という印象でした。人生の変遷や心情の移り変わり、経済分野で活躍した事績を考えると、視聴者からの共感をどう得ることができるのか、真剣に向き合いました」。作品では偉人の側面だけでなく、「一人の人間としての渋沢栄一」を意識。「時代に翻弄されながらも力強く進む栄一さんの姿を見て、自分たちも一緒に成長している気持ちになってほしかったです」

 放送時はコロナ禍の真っ只中。行動制限を余儀なくされ、孤独との戦いだった。「物語が後半に差し掛かると、『この時代だからこそ必要な作品』といった反響をいただき、救われる思いでした」。激動の生涯を丁寧に描き、渋沢を自分事に感じてくれたことが心の支えだった。

 「青春期を過ごした血洗島での生活こそ、渋沢栄一さんを創った原点」。両親の教えや従兄の尾高惇忠との関係、家業である藍玉販売の経験などが、情緒豊かな性格を育んだ。「温和な表情の肖像画が印象的ですが、実は破天荒でエネルギッシュな人物。感情表現が豊かな栄一さんの心の中には、常に故郷での思い出が生き続けていたのだと思います」

 ついに発行となった新1万円札。「お金というものが異様に綺麗なもの、汚いものということではなく、栄一さんの顔を見て身近な存在だと思ってくれたら」と願う。「栄一さんはどこかで今の日本を見てくれているはず。お金のために働くことはもちろん大切ですが、人のために心を尽くした栄一さんの精神を心に刻みながら、より豊かな人生をともに歩んでいきましょう」

■大森美香(おおもり・みか)

 福岡県生まれ。テレビ局勤務を経て、脚本家に。連続テレビ小説「風のハルカ」ほか多数の脚本を手掛ける。2005年「不機嫌なジーン」で第23回向田邦子賞。16年「あさが来た」で第24回橋田賞を受賞。17年「眩~北斎の娘」で文化庁芸術大賞、東京ドラマアウォードグランプリ受賞。「青天を衝け」で大河ドラマを初執筆。
 

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