埼玉新聞

 

<高校野球>指導者生活33年、最後の公式戦 戦い続けた選手らたたえ…浦和北の監督、ユニホーム脱ぐ

  • 指導者生活最後となった公式戦でシートノックをする浦和北高の西山忠監督(右)=10日午前、県営大宮球場

 10日に埼玉県営大宮球場で行われた浦和北―正智深谷の1回戦。3―5で敗れた浦和北高の西山忠監督(60)は来春の定年退職に伴い、この試合が指導者生活33年間で最後の公式戦となった。県高校野球連盟の役員としても埼玉高校野球の発展に尽力してきた西山監督は「格上の相手に勝つにはまだまだ足りない。だけど、選手たちにはここまで戦ってくれてありがとうと言いたいです」と選手と共に流した汗を拭った。

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■「泥くさくやり切る」を信条に

 西山監督はさいたま市(旧与野市)出身。大宮高、埼玉大を卒業後、県立高校教諭として与野農工高(現いずみ高)などを経て2013年に浦和北の監督に就任した。「泥くさくやり切る」を信条に熱血指導で選手からの信頼も厚かった。「人数が少なく甲子園出場は遠い学校ばかりに赴任してきたけど、どこに行っても高校野球はやっぱり楽しい」と選手に負けないぐらいバットを振り、選手たちにノックを打ってきた。

 また、もう一つの顔がある。「高校野球に育ててもらったから、恩返しがしたかった」と県高野連の役員として13年から県営大宮球場の球場主任を務める。試合間のスケジュール管理や観客の対応など裏方にも徹してきた。自校の試合が県営大宮球場で実施された時は、二足のわらじで奮闘してきた。

 人生の半分以上を高校野球に注いできた西山監督。最後の花道を飾ろうと、選手たちは正智深谷戦を前に「西山監督の最後で1勝するぞ」と鼓舞したという。そして、昨夏の独自大会で4強に勝ち残った実力校を相手に、この日は最後まで諦めなかった。

 正智深谷に2点先制されても四回に執念を見せて同点に追い付いた。2―2の六回2死二塁には矢作虎太郎選手が適時打を放ち、リードしたものの、七回に3点を許して逆転負け。短い夏となった。大水一真主将は「どうしても勝って、1勝を全力でプレゼントしたかった」と悔しさをにじませた。

 だが、西山監督にとっては、勝利よりも最後まで戦い続けた選手たちの勇姿に心を打たれたようだ。「コロナもあって思うように練習できなかったし、苦しかったと思うが、頑張ってくれた。欲を言えばたくさん練習したかったね」とたたえてユニホームを脱ぎ、指導者人生の幕を閉じた。埼玉高校野球に携わるのは、県高野連役員の本年度末までの半年を残すだけだ。

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