埼玉新聞

 

涙流し決めた覚悟…持ち前の明るさと前向きな言葉で球児の背中押す 大学の女子野球部でエースで4番で主将だった女性部長 モットーには社会に通じる“人づくり” 父が阪神ファンで幼いころから野球好き 「将来は高校野球の監督を」

  • 安打を放った選手にガッツポーズする岩槻商の梶原朋子部長(中央)=13日、アイル・スタジアム浦和

    安打を放った選手にガッツポーズする岩槻商の梶原朋子部長(中央)=13日、アイル・スタジアム浦和

  • 安打を放った選手にガッツポーズする岩槻商の梶原朋子部長(中央)=13日、アイル・スタジアム浦和

 「外野手、1歩目が大事だぞ。足動かせておけよ」「自信持って振っていこう」―。アイル・スタジアム浦和の三塁側ベンチからひときわ響く声の主は、岩槻商業高校野球部の梶原朋子部長(30)だ。今年4月に同校に赴任し、野球部の部長に就任して迎えた夏初戦。試合には敗れたものの、持ち前の明るさと前向きな言葉で球児の背中を押し続けた。モットーには社会に通じる“人づくり”を挙げ「将来は高校野球の監督をやってみたいですね」と目をキラキラさせた。

 梶原部長は根っからの阪神タイガースファンという父智さん(62)の影響で、幼い頃から野球が大好きだった。越谷大相模中、越谷総合技術高ではソフトボール部に在籍。進学した千葉商科大では念願の女子野球部に入り、エースで4番で主将を務め、投手として大学選抜にも選ばれた。

 教員になり初任地が浦和商業高校。7年間、女子ソフトボール部の指導に当たった。転機は今春。岩槻商に異動が決まったが、同校ソフトボール部の廃部が決まっていたため、校長から「野球の世界で頑張ってほしい」と告げられた。別れの時に浦和商のソフトボール部員にも背中を押され、「中途半端な気持ちで高校野球の指導者をやるわけにはいかない」と涙を流しながら覚悟を決めた。

 練習ではノック、打撃指導の技術面以外に試合や練習に臨む心構えなど選手を精神面でも支える。同校野球部の松沢聖晃監督(26)は「野球を愛してくれている1人の顧問の先生として、接し方や言葉の伝え方を勉強させてもらっている」と力を込める。中村圭太主将(17)も「ベンチにいてくれると心強くて安心する」、もう1人の3年生の今井愛希中堅手(18)は「こんなに熱い指導者を見たことがない」と笑顔を見せた。

 この日は0―21と点差はついたが、一塁手が後方の飛球を背走して好捕したり、三本間の挟殺プレーでアウトにしたり、随所に好プレーを見せた教え子に、梶原部長は「最後まで諦めない気持ちが表れていた」と褒めた。最後までベンチから大声でナインを勇気づけ「高校野球で使う“熱い夏”という言葉はうそではなかった」とうれしそうだ。

 高校野球指導者の道は、始まったばかり。強豪撃破はもちろん、「人として成長できる部活、社会に出て活躍できる選手育成を目指す」と決意を新たにし「高校野球は日本の国技。そこに携われている使命感はある。女子選手も含め野球人口を増やすことにも貢献したい」と拳を握った。

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