<川口いじめ>元生徒、ネット上で誹謗中傷した投稿者を提訴へ プロバイダーが情報開示「匿名でひきょう」
川口市立中学でいじめに遭った元男子生徒(16)がネット上に誹謗(ひぼう)中傷を書き込んだ投稿者の氏名などの開示を求めた訴訟で、東京地裁がプロバイダー3社に情報開示を命令した判決を受け、元生徒側が開示を求めた4件全てについて、昨年末までにプロバイダー側から開示された。元生徒側は今後、投稿者に対し、プライバシーを侵害されたなどとして、刑事告訴や損害賠償を求めて提訴の準備を進める。
開示されたのは、契約者の住所、氏名、メールアドレス。裁判の対象は契約者だが、契約者が投稿者とは限らないため、元生徒側は契約者の戸籍謄本、住民票の開示を受けて投稿者を調査している。
元生徒は2015年に市立中学に入学し、サッカー部に入った直後から暴力などのいじめを受けた。2年生になって部活顧問の体罰を受け、2学期の16年9月に悩んだ末の自傷行為を起こしたが、学校と市教委が第三者委員会を立ち上げ、いじめ調査が開始されたのは17年2月だった。
その後、調査委員会が設置されている中でもネット上の誹謗中傷はやまず、17年10月にネット上に中学校名を明記した「掲示板」が開設されると激しくなった。この頃は、文部科学省や県教委からいじめへの対応の遅れについて、指導を受けた市教委や学校が保護者会を開いていた。
元生徒側は「保護者会での学校側の説明が親子を悪人に仕立てる虚偽の内容だった。学校が事実と異なる説明を繰り返したことが、ネット上で元生徒を誹謗中傷する投稿が激しくなった一番の原因だ」と訴えている。
開設から約1年2カ月経過しているが、掲示板は今も存在している。元生徒に関する書き込みはこれまでに2780件に達した。特に悪質と判断した4件を選んで、投稿者の開示を求めたという。
元生徒の母親は「書き込みされた誹謗中傷のほとんどは事実ではない。その上、実名までさらされたのは許せる範囲を超えた。匿名なら身元が分からないという安易な考えで人を中傷し、あらぬうわさを拡散する行為がひきょうで悪質であることを、知ってほしい。私たちの(情報開示)判決が、ネットいじめやネット犯罪の抑止力につながることを切に願う」と話している。
元生徒側は、いじめへの対応が不適切だったとして、学校や市教委を相手に損害賠償を求め提訴し、さいたま地裁で審理されている。