埼玉新聞

 

なぜ大宮駅ある?私財をなげうって、駅誘致に大貢献した男性いた 地元民「この人いなければ“鉄道のまち大宮”ない」 るるぶ新シリーズで紹介、他にも埼玉の重要人物が 魅力度ランクに表れない埼玉の姿を凝縮

  • 「るるぶ まちといろ 埼玉」を手にする渡部大輔さん(左)と桜井晴也さん=26日、東京都江東区のJTBパブリッシング

    「るるぶ まちといろ 埼玉」を手にする渡部大輔さん(左)と桜井晴也さん=26日、東京都江東区のJTBパブリッシング

  • 「るるぶ まちといろ 埼玉」を手にする渡部大輔さん(左)と桜井晴也さん=26日、東京都江東区のJTBパブリッシング

 JTBパブリッシングが発行する観光ガイド「るるぶ」の新シリーズ第1弾「るるぶ まちといろ 埼玉」が発売された。県内の市区町村を全て網羅し、観光情報だけでなく、歴史や人物など、まちの魅力を詰め込んだ。約500ページにわたる“埼玉のお出かけ大事典”ともいえる内容で、キーワードは「埼玉愛」だ。

■奥ゆかしい郷土愛

 この新シリーズは、昨年「るるぶ」ブランドが誕生50周年を迎えたのを機に誕生した。コンセプトは「知る・深まる・埼玉LOVE」。県内在住者をメインターゲットに、観光スポットだけでなく、歴史や人物など地域のストーリーを掘り下げ、埼玉愛を感じてもらうのが狙いだ。

 郷土愛が薄いと言われることも多い埼玉県民。新シリーズの第1弾に、なぜ埼玉を選んだのか。

 同書の編集部で埼玉県民に話を聞くと、「うちには(話題が)何もないよ」と答える人もいた。それでも話を進めると、「実は…」とさまざまな地域の話題で盛り上がることが多かったという。

 地元に愛着を感じているが、他人には押し付けない。埼玉県民の郷土愛は「奥ゆかしい」と、編集デスクの渡部大輔さん(35)は言う。「(県別の魅力度)ランキングには表れない埼玉の県民性がありますよね」

 近年、同社から出版した埼玉の関連書籍の売れ行きも好調だったことから、ゴーサインが出たそうだ。

■ライターの熱意も力に

 この本の特徴は、県内全63市町村とさいたま市10区の情報を、それぞれ4ページ以上紹介していることだ。編集スタッフの桜井晴也さん(29)は「何もないまちは絶対にない。それぞれのまちには際立った個性や魅力がある」と話す。

 各地域の観光スポットやグルメ情報はもちろん、まちおこしや伝統産業などに取り組むキーパーソンなども紹介。長瀞で新たに生まれたヤナセ絣(かすり)や、春日部が舞台の漫画「クレヨンしんちゃん」の誕生秘話など、深掘り記事も読み応えがある。

 取材を始めて出版までの期間は約半年。編集部のほか、県内在住などのライターや編集プロダクションに声をかけ、約30人がかりで取り組んだ。この地元ライターたちの熱い埼玉愛も大きな力になったという。

 大宮区のページでは、私財をなげうって大宮駅の誘致に尽力した白井助七を2ページにわたって紹介。大宮在住のライターの「この人がいなかったら“鉄道のまち・大宮”はなかった」という強い推薦を受けて取り上げた。白井助七は旧大宮市の郷土学習の副読本に取り上げられていたが、他地域での知名度は低い。桜井さんは「私たちも興味を持って調べてみたら、『こんな人がいたのか!』と新鮮な驚きを感じた。編集部のリサーチだけでは、この情報に届かなかったと思う」と話す。

■県内メディアとコラボも

 県物産観光協会の協力で「埼玉県新商品AWARD」の受賞商品を紹介する特集、林家たい平さんら埼玉愛あふれる有名人のインタビュー、埼玉新聞など県内メディアとのコラボ企画もある。

 渡部さんは「知的好奇心を満足させるとともに、(観光ガイドとしての)実用面も兼ね備えている。地元の人には、この本で地域を再発見してほしい」と話していた。

 「るるぶ まちといろ 埼玉」は2420円(税込み)。県内を中心に書店などで販売中。
 

ツイート シェア シェア