暴言や腹部、腕殴られる暴行も 小4男児いじめで不登校…重大事態に認定、第三者委設置 学校に相談後もいじめ続き、保護者は警察に被害届 学校側は内部調査で報告書まとめ「これでおしまい」と主張 保護者は納得できず市教委と面談「時間がかかりすぎて、苦痛」
2022年度にさいたま市立小学校で、当時小学4年の男子児童がいじめが原因で一時不登校となり、市教育委員会は23年10月、いじめ防止対策推進法の定める「重大事態」と認定した。学校側は同年2月に独自の調査報告書を作成したが、重大事態と認めず、男子児童の保護者が重大事態を望んでいないと市教委に虚偽の報告をしていたことが分かった。市教委は、いじめの経緯や事実関係とともに学校側の対応が適切だったかを調べる第三者委員会を設置した。今年6月に第1回を開催し、これまでに計2回実施。被害児童の保護者から、近く聴き取りが行われる見通し。
関係者や学校の調査報告書などによると、22年4月、男子児童が「『死ね』とか『殺す』とか何で言うんだろう」とつぶやいたため、保護者が確認すると、クラスメートから度々暴言を吐かれていることが判明した。5月からは暴言に加え、腹部や腕を殴られるようになったため保護者が学校に相談。学校は6月に校内いじめ対策委員会を開き、いじめと認定して市教委に報告した。保護者はこの事実を同年10月に知ったという。
いじめは続き、10月にはほうきで顔面を殴られ、夜間救急を受診し左顔面打撲で1週間のけがを負った。11月には大宮署に被害届を提出。この頃から男子児童が在校時に腹痛や頭痛、気持ち悪さを訴えることが増え、心療内科医から「適応障害」と診断され診断書を学校に提出した。12月からは体調不良で学校を休むように。23年1~2月は学校に行ける時期と欠席する時期を繰り返していたという。
学校は同年1月から内部で調査。教職員や4年生児童への聴き取りなどを行い、2月下旬に独自の調査報告書をまとめた。しかし、報告書を受け取った男子児童の保護者は事実と異なる報告や軽微なトラブルのみが記載されていたため、内容の修正を求めた。さらに欠席が30日以上に達した点や診断結果を示し、いじめ重大事態認定を要望した。だが、学校側は「報告書は全て記載するものではない。重大事態には該当しない。これでおしまい」と主張し、調査の終了を告げられたという。
保護者は一連の調査内容や経緯に納得できず、8月に市教委と面談。市教委とのやりとりの中で、学校側が、保護者は「重大事態」を望んでいないと虚偽の報告をしていたことが判明した。10月、市教委は「診断書を見落としており、重大事態の認知が遅れてしまった。遅くても昨年(22年)末には、重大事態として取り扱わなければならなかった」などと保護者に謝罪し、重大事態認定と第三者委員会の設置方針を伝えた。
関係者によると、第三者委員会は弁護士や公認心理師ら3人で構成され、いじめが始まってから2年以上が経過した今年6月に、第1回が実施され、7月には第2回が行われた。近日中には被害男児の保護者への聴き取りを行う見通しで、9月以降に関係者らへのヒアリングなどの調査を開始するとみられる。
男子児童の保護者は埼玉新聞の取材に、「当時から寄り添った対応をしていただけていたら、こうはならなかった。(いじめの発覚から)時間がかかりすぎて、今でも調査していること自体が、被害者にとっては苦痛。再調査にならないように、しっかりと調べて事実を公表してほしい」と述べた。市教委は「個別の案件につき、コメントは差し控える」としている。