長崎市イスラエル招待しない判断に「いちゃもんつけるのはおかしい」…被害者協の代表委員が指摘 あえて空気を読まなかった決断を尊重する声
長崎市が平和祈念式典にイスラエルを招かなかったことについて、長崎で被爆した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中熙巳さん(92)=新座市=は「長崎市長は個人の考えではなく、『ガザで残虐な行為をしているイスラエルに来てもらいたくない』という市民や被爆者の気持ちを受けて、イスラエルを招待しなかった。それに対して怒ったり、いちゃもんをつけるのがおかしい」と指摘する。さらに「G7(先進7カ国)の大使が皆参加しないというのも不自然。説得できなかった日本政府にも責任があるのではないか」と話した。
広島で被爆した県原爆被害者協議会(しらさぎ会)の高橋溥さん(84)=川口市=は「非核は人類全体の問題。差をつけず、地球全体のことを考えて皆を集めるべきではないか。今起きている目の前のことだけではなくて、世界の人が集まって皆で取り組んでほしい」との考えを示した。
「原爆の図」を常設展示する丸木美術館(東松山市)の学芸員、岡村幸宣さん(50)は「戦後、誰が主導権を握り、世界を形成してきたのかをあらわにした出来事」と国際社会の“現実”が浮き彫りになったと指摘する。
「(イスラエルとつながりのある)米国などの国々(の大使)が、一斉に欠席するという非常に政治的な反応。力を持つ側が圧力をかける、ある意味のパワーハラスメントだ。ロシアは駄目だが、イスラエルは参加できる五輪のように、立場の強い国を中心に世界が回っている仕組みに、私たちは知らないうちに巻き込まれている」と述べた。
イスラエルを招待しなかったことに賛否の意見があるが、岡村さんは「長崎市もリアクションが起こることを予想していたと思う。けれどもあえて空気を読まなかった。結果的に世界の不均衡への異議申し立てというメッセージを示しており、その決断を尊重したい」と話した。