「迫力あって驚いた」 世界最大規模の行田の田んぼアート デザインした石川県の高校書道部員が訪問 能登地震で被災し、仮設住宅で暮らす部員も 復興へ決意を新たに
今年元日の能登半島地震で被災した石川県能登町にある同県立能登高校の書道部員らが9日、行田市小針の古代蓮の里東側水田で見頃を迎えている田んぼアートを訪れた。部員たちは、提供した書道作品が鮮やかに浮かび上がったデザインを見学。市内の県立進修館高校書道部員との交流会などにも参加し、古里の復興へ決意を新たにした。
田んぼアートは、行田市や市内の農業団体などでつくる「田んぼアート米づくり体験事業推進協議会」が主催。2008年に始まり、約2・8ヘクタールの広さは世界最大規模を誇る。例年、葉の色が異なった稲を植えて図柄や文字を表現。今年は能登半島地震の被災地を支援しようと、この地域を代表する祭りの「キリコ祭り」と、能登高書道部員が制作した文字を採用した。
高校生の訪問は、同協議会の招きで実現した。書道部員6人のうち、3年生で部長の橋本紗奈さん(17)、いずれも2年生の府中亜澄さん(16)と府中美音さん(17)が参加。学校関係者を含む一行が古代蓮の里にある古代蓮会館に到着すると、歓迎セレモニーが行われた。式典後、同会館にある高さ50メートルの展望室から田んぼアートを観賞。府中亜さんは「とても迫力があって驚いた」と喜んだ。
同協議会は、震災発生から間もない1月下旬に部員が「復興再生」と記した書を制作し、町役場に掲げられたことを交流サイト(SNS)で知り依頼した。同協議会の高鳥和子会長は式で「作品を書いていただき、ありがたい。少しでも復興の手助けになればうれしく思う」とあいさつ。同会館は能登地域の物産を9日まで販売するなど、市内にある施設ではさまざまな支援事業が行われている。
部員の府中美さんは、自宅に崩れた土砂が流れ込んで住めなくなり、町内の仮設住宅で暮らす。いとこの府中亜さんと相談し、「復興祈願」の言葉のうち得意な「興」と「願」の文字を書いた。「できるだけ早く、住み慣れた場所に戻れれば」と願う。
町役場に展示した作品は、まだ水道が復旧していなかったため、湧き水や雪を利用して完成させたという。同校の屋敷秀樹校長は「苦労して書いたが、そのおかげで行田との縁ができた。勇気を与えられたのではないか」と振り返る。橋本さんは「(書道を通して)私たちにできることを続け、町の復興につなげたい」と決意を新たにした。
交流会では、両校の書道部員が学校や部の活動について紹介。フリートークで互いに質問し合ったりして、友情を育んだ。進修館高書道部の部長で2年生の柿沼暖人さん(16)は、「能登半島は遠いけれど、身近に感じられるようになった。募金に協力するなど、できることから被災地を支援したい」と誓った。