埼玉新聞

 

<川口いじめ>「悪気ないから、いじめではない」と対立する市…元生徒の母「教育者に裏切られないように」

  • 男子生徒は2017年12月に第三者調査委員会へ宛てた手紙で、いじめの実態を切々と訴え「学校はじごくだと思いました…だからぼくは死のうとしました」と書いた(画像を一部加工しています)

 川口市立中学校在学中に不登校になったのは学校や市教委の対応が不適切だったためとして元生徒の男性(18)が市に500万円の損害賠償を求めている訴訟の弁論が1日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)で開かれ、元生徒側と市側の双方が最終弁論を行い結審した。12月15日に判決が言い渡される。

 この日は元生徒の母親の森田志歩さんが「いじめにより子らが傷ついたり、子らが教育者に裏切られることがないよう正義に基づく裁判所の判断を切に願います」と意見陳述した。

 元生徒側の最終弁論は、学校でいじめが発生した場合、事実調査で実態を把握し、学校関係者が組織的に動いて、加害生徒への指導の徹底などいじめの解消に力を尽くすなど、各種の義務についていじめ防止対策推進法の観点から市の対応を検証した。

 元生徒側は、市が設置した第三者調査委員会がいじめと認定した、サッカー部員らによるライン外しなどのいじめ行為の調査や解消指導など学校に課せられた義務が果たされていなかったと主張。「ひとつのいじめの解消の失敗が次のいじめにつながり、本件の場合はサッカー部内にいじめの温床が残され、別のいじめの発生や元生徒の不登校につながった」と指摘した。

 市側は「悪気がないからいじめではない」などと、事実認識でも生徒側と食い違い、裁判は全体として真っ向から対立する形になった。

 元生徒側はいじめ防止対策推進法の立法に携わった小西洋之参院議員が「学校の裁量を優先させる市側の主張は対策法の存在を否定する暴挙」と批判する意見陳述書も提出した。

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