埼玉新聞

 

【東京ウオッチ】ラビリンスで発見する、日本の美―十文字美信さんが大乗寺障壁画の写真展 いまのTokyoをつかむイベント情報(7日~15日)

  •  十文字美信「『孔雀の間』円山応挙と『仏間』十一面観音像」(アクリルプリント、ファブリック、インスタレーション)=東京・銀座(撮影:山口徹)(提供写真)

     十文字美信「『孔雀の間』円山応挙と『仏間』十一面観音像」(アクリルプリント、ファブリック、インスタレーション)=東京・銀座(撮影:山口徹)(提供写真)

  •  十文字美信「大乗寺十三室のイリュージョン」(ラムダプリント)=東京・銀座(撮影:山口徹)(提供写真)

     十文字美信「大乗寺十三室のイリュージョン」(ラムダプリント)=東京・銀座(撮影:山口徹)(提供写真)

  •  金魚をガラス工芸で表現した作品(提供写真)

     金魚をガラス工芸で表現した作品(提供写真)

  •  芹沢☆(金ヘンに圭)介作「沖縄笠団扇文着物」(1960年頃 紬、型染 丈160.0cm 日本民芸館所蔵)(提供写真)

     芹沢☆(金ヘンに圭)介作「沖縄笠団扇文着物」(1960年頃 紬、型染 丈160.0cm 日本民芸館所蔵)(提供写真)

  •  食のイベント「福島×京料理の饗宴」で提供される懐石料理のイメージ写真(提供写真)

     食のイベント「福島×京料理の饗宴」で提供される懐石料理のイメージ写真(提供写真)

  •  十文字美信「『孔雀の間』円山応挙と『仏間』十一面観音像」(アクリルプリント、ファブリック、インスタレーション)=東京・銀座(撮影:山口徹)(提供写真)
  •  十文字美信「大乗寺十三室のイリュージョン」(ラムダプリント)=東京・銀座(撮影:山口徹)(提供写真)
  •  金魚をガラス工芸で表現した作品(提供写真)
  •  芹沢☆(金ヘンに圭)介作「沖縄笠団扇文着物」(1960年頃 紬、型染 丈160.0cm 日本民芸館所蔵)(提供写真)
  •  食のイベント「福島×京料理の饗宴」で提供される懐石料理のイメージ写真(提供写真)

 ◎今週の一推しイベント

 【7日(土)】

 ▽「空想の宙(そら)『静寂を叩く』 大乗寺十三室┃十文字美信」(~10月20日、入場無料、中央区・資生堂ギャラリー)

 日本文化の伝統と向き合い、その美を表現し続ける写真家、十文字美信さんの展覧会が、銀座で開催されている。

 大乗寺(兵庫県香美町)客殿が誇る、江戸時代の絵師円山応挙らの障壁画(1階11室と2階2室の全165面)を高精細のデジタルカメラで撮影し、写真集として昨年刊行。本展ではそれらの画像を、会場空間に合う作品に再構成した。

 応挙の障壁画「松に孔雀図」を大きく引き伸ばした写真がメインの作品だ。松の葉や鳥の羽の細かい筆遣いまで見て取れる。会場で鐘が鳴ると、この孔雀図の表面に観音の顔が大きく浮かび上がるようにした。その意図を十文字さんは「大乗寺の孔雀図の後ろには十一面観音像が置かれていて、撮影が無事にできるよう毎朝感謝を込めて祈っていた。その行為自体を表現しようと思った」と言う。

 自然光で撮影した1階の11室の障壁画を並べた一角も。壁の平面上の写真なのに、ふすまが開かれ次の部屋へとつながる奥行きが表現されており、迷路に迷い込んだような錯覚を覚えるだろう。

 十文字さんは「西洋の動かない壁画とは違い、東洋では障壁を開けると別の部屋が現れる。昔の人が考えた魅力的な室内空間をラビリンスのように再現したかった」と語る。ここだけで体感できる大乗寺の空間と、写真の可能性を楽しみたい。

 ○そのほかのお薦めイベント

 【7日(土)】

 ▽「Curated by Riusuke Fukahori『金魚美抄2024×銀座』 蔦屋書店~Goldfish Art Collection~」(~10月13日、中央区・銀座 蔦屋書店)

 美術作家の深堀隆介さんの監修で金魚を表現した作品を紹介する展覧会「金魚美抄2024」のエッセンスを感じるフェアが、銀座で行われている。

 浮世絵にも描かれたように金魚は江戸時代から庶民に愛されてきた。その金魚をモチーフに作品を手がけるアーティストたちが参加し全国を巡回中の展覧会が、銀座の蔦屋書店と協力。同展出品中の作家10人による金魚作品やグッズを集めて展覧会の雰囲気を味わってもらう試みとなる。

 絵画やイラスト、切り絵などの平面作品、フェルトを使った立体作品、現代アートやガラス工芸など、それぞれの技法、表現を駆使した魅力的な「金魚」を展示・販売している。展覧会は5日から奥田元宋・小由女美術館(広島県)で開催中。

 ▽「芹沢☆(金ヘンに圭)介の世界」(~11月20日、目黒区・日本民芸館)

 日常の品々に美を見いだす「民芸運動」に携わった染色家の芹沢☆(金ヘンに圭)介。2025年の生誕130年を記念した展覧会が、駒場で開かれている。

 民芸を提唱した柳宗悦の著書や、沖縄の染物技法である紅型との出合いにより、染色家になることを決意。図案・型彫り・染めまでを一貫して行う「型絵染」の技法で、明るい色調と明快な文様を特徴とする作品を多く生み出した。

 「御滝図のれん」「沖縄笠団扇文着物」など約120点を展示。身辺の品々のスケッチから生まれた、日常へのまなざしが感じられる文様が見どころだ。 

 学芸員の古屋真弓さんは「作家が生み出した文様はモダンでみずみずしさを失わない。目的地まで最短・時短で行かず、時間をかけ創作することが良い作品につながると知っていた。目に見えない日常の積み重ねを楽しんでほしい」と話した。

 ▽「雷門盆踊り~夢灯篭~」(18時、台東区)

 浅草を象徴する浅草雷門正面の並木通り全体を会場にした盆踊りが行われる。

 曲目には「東京音頭」から桑田佳祐さんの「波乗りジョニー」までそろい、老若男女が楽しめる。歩道に秋田県湯沢市の七夕の風物詩「絵どうろう」も展示。過ぎゆく夏を惜しみながら家族や友人たちと踊りたい。

 【11日(水)】

 ▽「福島×京料理の饗宴―絆―PREMIUM DINING」(11時30分、事前予約制、文京区)

 福島県産食材を使った京都の懐石料理を味わうイベントが、ホテル椿山荘東京で行われる。

 2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故、23年から始まった原発処理水の海洋放出などの影響から風評被害が続いている福島県産食材の魅力を伝えたいとの思いから企画された。消費拡大や被災地への訪問者を増やしたいとの意図もある。

 京都の料理人たちが福島県を訪ねて地元の生産者や料理人たちと交流し、食文化への理解を深めてきた。「魚三楼」「たん熊北店」など京都の11の有名料亭を中心とした料理人たちが、福島県の新鮮な野菜や果物、海産物と京都の技術を融合。「メヒカリの小袖寿司」「ホッキ貝の酢の物」などの独創的なメニューが提供される。会場には、有名料亭の主人や若主人も登場。一皿に込められた技や魅力について、解説を行う。

 企画した日本料理アカデミーの田中良典さんは「福島は食の宝庫だが、名物だけではなく他の優れた食材も紹介する。他の地域にも全国的に知られていない食材がある。美しい懐石料理に触れながら、自分たちの地域の食べ物の良さを発見してほしい」と話した。

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