高校生がバケツリレーで消火 燃える犬小屋、近くの野球部員が好連携 消防団分団長も務めるコーチの指示で30個のバケツ使い 犬は住人が避難させ、けが人もなし 冷静な行動に称賛
消防車が到着する前に火災を鎮圧したとして、熊谷市消防本部は県立熊谷商業高校の野球部員と埼北酪農業協同組合の職員を表彰した。熊谷市広瀬の同校で練習中だった野球部員たちは、近くで発生した火災に気が付くと、バケツリレーで消火に協力。培ったチームワークを発揮した。
同本部によると、火災は7月30日、近隣の住宅敷地内で起きた。犬小屋から出火し、3個を焼失。飼われていた犬は住人が安全な場所に避難させ、けが人もなかった。
部員らが異変を察知したのは、打撃練習の準備をしていた時。この日は1、2年生27人のほか、全国高校選手権埼玉大会で引退した3年生のうち5人ほどが手伝いに来ていた。前主将で3年生の中村謙吾さん(18)は「黒い煙が流れてきたので、何かあったと感じた」と振り返る。
市内の消防団で分団長をしている外部コーチの水野俊也さん(53)が指示し、部員は初期消火の態勢に入った。グラウンドにあった30個ほどのバケツを使い、校内の水道から約30メートル離れた現場までリレー。機転を利かせた部員は住宅を挟んで反対側数メートルの場所を流れる用水路からもバケツリレーし、両ルートで水をかけた。約15分後に消防車が到着した頃には、火はほぼ消し止められていたという。
水野さんは「火災現場で冷静さを保つのは、簡単ではない。びっくりするくらい落ち着いて対応してくれた」と称賛。中村さんは「チームワークを大切にしているので、一つにまとまれたのだと思う」と胸を張る。前副主将で3年生の福嶋爽蒼(そら)さん(18)も「気が付いたらすぐ行動するという、みんなの心がけが生きた」とうなずく。
同本部によると、2024年度の表彰は2件目だという。同本部消防総務課の担当者は「早期の発見と消火活動によって、被害を最小限に食い止められた」と感謝する。
8月22日の表彰式には、野球部を代表して中村さんと福嶋さんが出席した。直球が最速147キロを誇る右腕投手の中村さんは、大学に進学して野球を続ける予定だ。将来はプロ野球でプレーするのが目標で、「今回の経験みたいに、アクシデントがあっても冷静に判断して最善の行動を取れる選手になりたい」と掲げる。
福嶋さんは競技生活から退き、大学に進んで小学校教諭を目指すという。「地域や子どもたちのために行動できる人間になれれば」と誓った。