ショック!市民に喪失感 川越まつり、2年連続中止 技術伝承も懸念…祭りの記憶、記録や展示で後世に
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2年続けて中止となった川越まつり。祭りを愛する市民の精神的な喪失感とともに、ブランクが生じることで祭礼技術の伝承への影響も懸念されている。祭りの記録化や資料展示を通じて、歴史や伝統を感じようとする取り組みが見られている。
■アーカイブに
「古い山車は、くぎ1本使われていない。山車の組み立て技術は簡単に身に付くものではない」。川越市山車保有町内協議会の井上誠一郎会長(84)はそう指摘する。
川越まつりは370年以上の歴史を誇る伝統祭事。2層の鉾(ほこ)と人形からなる各町自慢の山車が市街地を巡行し、おととしは2日間で約88万人の見物客が訪れた。
山車が日の目を見るのは年に1度、10月の川越まつり。各町で山車の形態は異なるが、祭りの前にとび職人や大工の手を借り、各町が山車を組み立てていく。最初から形として保管されているのは「車輪ぐらい」といわれる山車もあり、作業は経験がものをいう。川越まつりに欠かせないはやし、木やり歌にも伝統が受け継がれている。
今年も中止が報じられた7月、「川越まつり今昔アーカイブプロジェクト実行委員会」(事務局・野村証券川越支店)が発足した。川越まつりの根源とされる例大祭を執り行ってきた川越氷川神社をはじめ、市囃子連合会、川越鳶組合、川越商工会議所などがメンバーに名を連ねた。
プロジェクトは会員制交流サイト(SNS)を活用した「オンライン」と、写真展やリアルイベントといった「オフライン」による一般参加型の両面から展開する。川越まつりの過去の写真をフェイスブックで投稿を募り公開したり、祭りに携わる人々のインタビュー記事を掲載していく。
事務局は「祭りを受け継いできた方々の思いや記憶をテキスト化、デジタル化し、後世に残すためアーカイブしていく」と説明する。
■祭り気分を
プロジェクト実行委の会長に就いた井上さんは「技術の伝承も大事だが、祭りが行われない寂しさの方が市民にとって重いかもしれない」と指摘する。
川越まつりへの思いを形にする動きも出ている。山車を管理する仙波町仙波会は、過去の川越まつりで撮影した写真や、ちょうちんなど祭礼道具、祭りの衣装などを川越駅前の商業施設「川越マイン」で11月下旬まで展示している。山車を引っ張るひき綱の制作工程も映像で公開している。
仙波会の安田善昭会長(56)は「川越まつりは中止となったが、少しでも祭り気分を味わってもらいたい」と願う。
熱心に見学していた女性は「(川越まつりに)ずっと参加してきたので、2年続けて中止はショックだった。来年は川越市制施行100周年だし、祭りで盛り上がりたい」と話していた。