JR高崎線、京浜東北線など運転見合わせ23万人影響 埼玉・蕨で基幹変電所火災 4年前も大規模トラブル
10日午後0時55分ごろ、蕨市塚越4丁目、JR東日本の「蕨交流変電所」から出火、トランス室を焼失した。蕨署によると、火は約3時間20分後に鎮火したが、火災の影響で停電が発生し京浜東北線や高崎線など首都圏の在来線が一時運転を見合わせた。乗客ら約23万6千人に影響した。11日は始発から平常通り運転し、火災や停電に伴う大きな遅延などは発生していない。
JR東によると、山手線や武蔵野線などは約1時間後に運転を再開。京浜東北線大宮―赤羽間や東北線(宇都宮線)東京―大宮間、高崎線東京―大宮間の上下線は同日午後8時すぎまでに運転再開した。運転見合わせ時は東武伊勢崎線や埼玉高速鉄道、埼玉新都市交通などで振り替え輸送を行った。停電時、各路線の途中で止まった電車は近隣変電所からの一時的な送電によって最寄り駅まで移動した。
蕨署によると、トランス室は広さ82・5平方メートルで変圧器などを収納しており、中に入る扉には鍵が掛けられていた。当時は無人という。近隣住民から「爆発音が聞こえた」と119番があった。けが人はいなかった。
県警は11日、消防とともにトランス室を実況見分した。
同変電所は基幹変電所に位置付けられ、複数の変電所を通じて首都圏を走る各路線に電気を供給している。同変電所では2017年9月にも、点検作業時のミスで大規模な停電が発生し、高崎線などが最大で約40分間運転を見合わせるトラブルがあった。
また県内で最大震度5強を観測した7日の地震との関連について、JR東は「調査中」としている。
■利用客「もっと早く復旧を」
蕨市のJR東日本の変電所火災に伴う10日の停電では、県内を走る複数の在来線が運転を見合わせ、休日の電車や駅の利用客を直撃した。11日には平常通りの運転に戻ったが、利用客からは「もっと早く復旧する体制を整えて」などと不満が上がった。
停電した浦和駅は電光掲示板も止まり、電車に乗ろうと訪れた人たちは手書きの運行状況を見つめたり、駅員に尋ねていた。駅員たちは「再開のめどは立っていません」「武蔵野線は再開していますが、本数が少なくなっております」と繰り返していた。
利用客はしばらくどうしようかと考えていたが、次第に諦めて去り、一部は武蔵野線が走る南浦和駅まで歩いていた。
線路上には運行途中とみられる京浜東北線が止まり、車内には乗客たちがじっとした状態で再開を待っていた。
浦和駅併設のアトレ浦和も停電に見舞われた。小売店スタッフの20代男性は「突然全ての電気が止まり、営業できない状況になった」。飲食店勤務の50代女性は「当時は昼食を取る客がおり、騒然としていた」と話した。エレベーターやエスカレーターが止まっており、非常階段を使って退館した。
出火した変電所付近では警察が周囲を封鎖し「(変電所の)建物の煙を排出する作業を行います。有毒かもしれないので、家に戻り窓を閉めてください」と呼び掛けた。
停電から一夜明け全線で通常運転となった11日朝は、通勤通学の利用客が通常通り電車を利用していた。武蔵野線や埼京線が通る武蔵浦和駅でも、乗客が混乱している様子は見られなかった。
武蔵野線を利用する20代女性は「運転再開と聞いていたが、不安で30分ほど早く自宅を出た。問題なさそうで良かった」と安堵(あんど)した。
埼京線を利用する20代会社員男性は「7日の地震の際には帰宅できず、昨日(10日)も足止めに遭った。もっと早急に復旧できる体制を整えてほしい」と嘆いた。
同変電所で2017年にあった点検作業時のミスに伴う停電で、JR東は当時、点検作業手順の明確化や作業員への指導の徹底などの再発防止策を講じたという。
今回の火災や停電についてJR東は「まずは原因究明を徹底的に行い、再発防止に努めたい」とした。