埼玉新聞

 

<新型コロナ>注文の電話「うれしかった」 酒類の卸売業者、飲食店の酒類提供再開も売り上げ回復せず

  • トラックに酒を積み配達準備を進める男性=15日午後、吉川市の十八屋

 緊急事態宣言を受けて飲食店が酒類の提供を自粛したことに伴い、飲食店などを顧客とする酒類の卸売業者も大きな打撃を受けた。経営危機を乗り越えるため給付金を受けたり、自社販売するため店舗を構えるなどした業者も。10月1日の宣言解除で、飲食店もようやく酒類の提供を再開し、注文も増加。ただ、売り上げが回復せず、アフターコロナの事業を模索している業者もいる。

 宣言期間中は新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、ほとんどの飲食店で酒類の販売が停止されていた。県内を中心に約千店舗の飲食店やホテルなどに酒類を卸している旭屋(さいたま市浦和区)の牛草雄一社長(59)は「緊急事態宣言中は、ほとんど注文がなかった。苦しかった」と語る。

 宣言期間中は、給付金の受給などでしのいでいたが、宣言の解除を控えた9月の終わりごろから注文が増え始め、「今はうれしい状況」と語る。1日当たりの売り上げは、宣言期間中と比べ数十倍にも増えたという。

 「コロナ禍で音信不通だったお店の人から注文の電話を受けたときはうれしかった」。県南東部、約250店舗に酒類や飲料水などを卸している十八屋(吉川市)代表取締役の石井和也さん(47)は笑顔を見せる。宣言期間中は「コロナ前に比べて売り上げが7割減。注文の多くはノンアルコールだった」。

 今年1月、事務所スペースを改装して店舗を構え、酒類の販売を開始。石井さんは「家飲み需要もあってお酒を買いに来る人は増えた」と感じている。宣言下の今年1~2月と8~9月には、複数の飲食店に声を掛け、同社敷地内でテークアウト限定で弁当販売を実施。イベントを手掛けたことで「(店舗にも)ライトユーザーがたくさん来た」と語る。

 現在、酒類の注文も増えているというが、売り上げは平時の約7割程度と回復はしていない。石井さんは「注文の店舗数はコロナ前と比べて変わらないが、1店舗当たりの量が減った」と話し、今後も以前の状況には戻らないのではないかと推測。「アフターコロナに対して事業をどう調整していくか考えている」という。

 浦和小売酒販組合は「(緊急事態宣言が解除され)時間の制限やワクチン証明などいろいろな話はあるが、外で飲む機会が増えたことは良かった」と話した。

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