埼玉新聞

 

最大の武器「職務質問」、犯罪摘発や抑止に大きな効果 埼玉県警が専門の指導班、新人警官の指導もに注力

  • 街の人に声を掛ける中谷俊太巡査(左)ら=9月23日、富士見市鶴瀬東の東入間署富士見交番

 県警察学校を卒業したばかりで東入間署に配属された新人警察官が9月、職務質問で自転車盗の逮捕に貢献した。県警はさまざまな犯罪の抑止や摘発につながる職務質問を重視しており、若手への指導にも注力。地域総務課に専門の指導班を設置し、職員の技能向上に向けた対策を推進している。

 職務質問で逮捕に貢献したのは東入間署地域課の中谷俊太巡査(25)。同署によると、9月5日正午すぎ、ふじみ野市の上福岡駅西口付近で、耳にイヤホンを着けて自転車を走らせているフィリピン人の会社員少年(19)を発見。中谷巡査は初め、交通違反を指導したが、自転車に貼ってある防犯登録のシールが一部削れていたことに気付いた。

 質問をしていくと少年は最初、「知らない」などと話していたが、目線や考えながら話している様子に巡査は違和感を覚えた。近くにいた上司も加わり、追及していくと少年は「すみません。やりました」と盗んだことを自供した。自転車は川越市の南古谷駅の駐輪場に止めてあったもので、所有者に返された。

 中谷巡査は7月15日に警察学校を卒業したばかり。現場に出てから約1カ月半で摘発に貢献した。職務質問は警察学校や現場で上司から方法などを学んできたという。

 指導員として職務質問の指導を行っている東入間署地域課の池永強志巡査部長(49)は「(若手の警察官は)法的なことを頭に入れているし、ロールプレーイングなどで練習はしているが、実際にやってみると忘れていることもある」と語る。初めのうちは声を掛けることにためらう若手も少なくなく、ちゅうちょしない大切さも教えている。

 「最初の頃は緊張していた」と言う中谷巡査も「声掛けは市民の人とコミュニケーションを取るための大事なツールと認識している」と、積極的に行っている。今回の職務質問では「逃げる可能性もあるので、相手がいつ動くか気にしながら見ていた。完璧ではないが、今までの指導を生かせた」と話した。

 一度は別の仕事に就いたが、働きながら約2年間勉強に励み、警察官になった中谷巡査。将来は刑事になるのを目標にしているという。「若いうちに多くのことを学んで、憧れていたような警察官になるために、精いっぱい努力したい」と意気込みを見せた。

 東入間署の小川実署長は「この検挙をきっかけに、さらに県民を支える警察官に育ってほしい」と話した。

 県警地域総務課によると、県警には「地域総務課職務質問技能指導班」と呼ばれる職務質問専門の指導班が10人いる。指導班は職務質問やパトロールの実績がある人で、職務質問のプロフェッショナルだ。指導班は、ほぼ全ての警察署に配属されている指導員と呼ばれる警察官を指導。指導員は各署で署員らに指導班からの教えを還元していく。

 職務質問の指導は、一般市民への対応の仕方や不審点の追及の仕方などさまざまある。同課は「若手の警察官にも職務質問の指導を行い、能力の向上につなげていければ」と話す。

 同課によると、職務質問は犯罪を見つけるだけでなく、犯罪の抑止や市民の安心安全にもつながるという。職務質問は警察官にとって「最大の武器」であり、実際に特殊詐欺の受け子とみられる不審者に職務質問して、詐欺被害を未然に防ぐ事例も多い。職務質問は、警察官にとって大事な職務となっている。

 地域総務課は「職務質問は犯罪の検挙はもちろん、犯罪の抑止にも大きな効果があり、これからも積極的に取り組んでいく」としている。

ツイート シェア シェア