声優・千葉翔也「ビビッときた」 部活に恋にひたむきな男子高校生演じる テレビアニメ「アオのハコ」
スポーツ強豪校を舞台に、部活に打ち込む高校生たちの恋と青春を描くテレビアニメ「アオのハコ」が、10月3日からTBS系で放送される。主人公は男子バドミントン部1年の猪股大喜。朝練で毎日のように顔を合わせる1学年上の先輩、鹿野千夏に恋をするが、女子バスケットボール部の中心選手で人気者の千夏は遠い存在だ。そんなある日、思いも寄らない出来事が2人の距離を大きく変える…。
部活にも恋にもひたむきで、誰よりも千夏のことを思いやる大喜の声を担当するのは、声優の千葉翔也。書店で原作漫画の表紙を一目見て「この子やりたい!」とほれ込み、オーディションで役を勝ち取ったという千葉に、作品の魅力や、収録の様子を聞いた。
【ちば・しょうや】 1995年生まれ、東京都出身。主な出演作に「青のオーケストラ」(青野一)、「ようこそ実力主義の教室へ!」(綾小路清隆)など。
【目次】
(1)表紙に「ビビッときた」
(2)「キャラ」ではなく「人間」を表現
(3)一つのシーンを多角的に
(4)「聞くと心が安定する」ものとは?
(1)表紙に「ビビッときた」
記者 出演が決まった時の心境は。
千葉 書店で原作の表紙を見て「この子やれたらいいな」ってビビッときたんです。だからオーディションはすごく緊張したし、決まった時はうれしかったです。
記者 原作のどんなところに魅力を感じましたか。
千葉 心理描写が細やかで、共感できる。登場人物それぞれの気持ちを少しずつ描くことで読者に考えさせる部分があって、自分はそういうものをくみ取って表現するのが好きなので、やりがいがあるなと思いました。
記者 役作りをする中で、大喜というキャラクターの印象に変化はありましたか。
千葉 普段は自分が出ることになったからといって、特にそれ以前と比べて印象が変わることはないんですが、今回はかなり違いました。演じる立場として「分析する」目で読むと、大喜って「分析不能」だったんです。真っすぐさや誠実さに「何でそうなのか」という根っこがなくて「大喜が良いやつだから優しいんだ」みたいなところに行き着いてしまう。
記者 理詰めが通用しない。
千葉 初めは「どうしよう?」ってなりましたけど、そこに気付いたことで、自分の勝手な印象を取り除いて読めるようになりました。例えば大喜のモノローグは、漫画を普通に読むと結構ギャグっぽく感じるんですけど、大喜は別にギャグのつもりで言ってない。そんな感じで印象が変わるので、再読のたびに初めて読むような感動を味わっています。
(2)「キャラ」ではなく「人間」を表現
記者 「根っこ」がないとすると、演技の軸みたいなものはどう設定したのでしょうか。
千葉 僕は普段、キャラの行動理念を考えて「今こういう感情で、それを引っ張って、何話か後に効いてくる」とか、論理的に組み立てているんです。今回もそれはやってるんですが、最終的に演じる時は全部忘れる。大喜は相手のためを思うときに力を発揮する人なので、現場で千夏先輩(を演じる上田麗奈)の声を聞いて生まれる感情が一番というか。
記者 綿密な役作りというよりは、ある程度その場の衝動に任せていく。
千葉 そう、大喜って「気を使えるのに衝動的」って矛盾をはらんだ人物なんです。これも「人ってそういうもんだよな」と実感しました。理詰めで分析できる「キャラクター」ではなく、猪股大喜という「人間」を表現するんだという気持ちで向き合っています。
記者 そんな大喜が恋をするのが千夏先輩です。彼女のどんなところを好きになったのでしょうか。
千葉 バスケに対する姿勢ですね。ここまで一生懸命になれるんだ、という尊敬の念みたいなところで、まず心が大きく引っ張られて、そこからかわいらしい一面なんかも知って、より好きになっていく。「人として好き」な部分と「年上の女性に憧れる」感情と、二つの軸が絡み合ってる感じがします。
記者 いかにも高校生!という感じの初々しい感情です。
千葉 ただ、この作品に出てくる子たちって、みんな高校生にしてはすごく他人を尊重できる素晴らしい人間性の持ち主なんですよ。スポーツで全国を目指すだけあって、邪念がない。だから大喜が千夏先輩を人として尊敬する気持ちは、今後2人が仲たがいすることがあったとしても変わらないんじゃないかな。そこがこの作品の気持ちのいいところです。
(3)一つのシーンを多角的に
記者 恋模様とともに、バドミントンという競技の楽しさも描かれています。バドの経験は?
千葉 遊びとか体育の授業でやった程度です。ただテニスの経験はあるので、ラケット競技のことは多少、分かるかも。コートの中で1対1、または2対2で打ち合う競技なので、必ず点が入るし、勝敗がつく。白黒はっきりするところが大喜に向いていると思うし、僕自身も魅力的だなと感じます。
記者 収録現場の雰囲気を教えてください。
千葉 登場人物の気持ちについて、みんなで話すことが多いですね。例えば、あるシーンで大喜がどう感じていたかを僕だけじゃなく、上田さんや(大喜の幼なじみ)雛役の鬼頭明里さんの目線で分析して話し合う。僕の解釈とは全然違うことも多いんですけど、そうやって一つのシーンを多角的に見てみるのがこの作品においてはプラスに働いてると思います。
記者 そういうディスカッション、アニメの現場では珍しい気がします。
千葉 話し合うといっても結論を出すわけじゃなくて、自分は大喜としてこういうつもりで言ったせりふが、雛である鬼頭さんには全く違った聞こえ方をしていることを確認して「だったらこれで正解だな」と安心する感じ。
記者 解釈の食い違いまで含めての役作りということですね。
千葉 ただ、上田さんがあまりにも千夏先輩の気持ちを考えて語ってくださるので、原作を読んだ時には理解できなかった千夏先輩のことが最近少し分かってきちゃって。でも大喜としては分かっちゃいけないので、頑張って止めてます(笑)。
(4)「聞くと心が安定する」ものとは?
記者 大喜は千夏先輩への思いを原動力に、部活でも結果を出していきます。千葉さんご自身が仕事をする上での力の源は?
千葉 根本のところで言うと、この仕事って自分がそのとき感じて表現したことが、かけがえのない事実として残るんですよね。さっきの話じゃないですけど「本当の気持ち」って他人にはまず伝わらないじゃないですか。目に見えない、写真にも動画にも写らない自分自身の心の動きを、少なくとも作品という形で残せるのが、生きていく上で励みになるというか。
記者 昔の出演作を見返すこともあるんですか?
千葉 DVD出してまで見る時間はあまりないですけど、配信サービスなんかで見かけたら結構…他の声優より頻繁に見返してるかも(笑)。後はこれ、本当にいないと思うけど、過去のオーディション音源を聴いたりします。その時の自分が一生懸命だった証拠だから、聴き返すと心が安定するんですよ。
記者 幅広い役柄を演じるために心がけていることは。
千葉 演じるとっかかりは自分なので、悲しみのどん底にいる時も、喜んでる時も、そのときの自分を覚えておいて、作品によって使い分けています。へこんだシーンの前には自分がすっごく落ち込んでる時の写真を見たり…ちょっと気持ち悪いですね(笑)。
記者 今年はアーティストデビューもされました。歌手として、声優として、今後の目標を教えてください。
千葉 歌では、アニメのフェスに歌手として出られるようになりたいです。もちろんアニメのタイアップ曲も歌いたい。役者としては…自分が「すごい」と思っている先輩たちと共演したときに「びりびりきた」と思われたいかな。視聴者に楽しんでもらうのはプロとして当然なので、一緒に作っている人から「この人とだったら良い作品ができる」と感じてもらいたいです。
☆アニメ「アオのハコ」は10月3日午後11時56分からTBS系で放送スタート
(共同通信=高田麻美)