埼玉県庁の本庁舎「移転がよい」の声最多、「現在地で建て替えがよい」の声を上回る アンケ結果を公表 南部、北部、秩父地域で分かれた埼玉県民の感覚
老朽化が進むなどの課題のある県庁本庁舎(さいたま市浦和区)の建て替えを巡り、県は24日、検討の参考にするために県民らに行ったアンケートの結果を公表した。県庁舎は2031年度に目標使用年数を迎える。本庁舎を「移転した方がよい」と答えたのは42・9%で、「現在地での建て替えがよい」とする34・9%を上回った。一方、県職員の回答は「移転」15・2%、「建て替え」30・4%となり意見が分かれる結果となった。大野元裕知事はこれまでの議会の答弁などで「年度内に方向性を示したい」としている。
同日行われた有識者で構成する専門家会議で明らかになった。県民アンケートは7月8日~8月7日までウェブ上で実施し、2720人が回答。県職員アンケートは7月8~19日まで行い、対象者の約4割に当たる3504人が回答した。
アンケートでは、移転・建て替えのほか再整備で最も重要と思うことなどを質問。県民には年齢や居住地、来庁頻度なども尋ねた。
地域別の回答者割合はさいたま(39・9%)▽秩父(14・9%)▽北部(12・4%)の順に多く、本庁舎が現在立地するさいたま地域や南、南西部では「現在地での建て替え」を望む声が多かったのに対し、北部、秩父地域では「移転した方がよい」とする回答が多い傾向にあった。
会議では、出席した委員から「人口比率と回答者(割合)の乖離(かいり)が大きく、県民のフラットな意見とは隔たりがあるのではないか」や「これをベースに議論するのは間違った方法になる」といった意見が相次ぎ、無作為抽出による再調査を求める声も上がった。
事務局を務める県管財課によると、現時点で再調査の予定はないといい「データの偏りも踏まえた上で検討の参考にする」との認識を示した。
会議ではこのほか、働く場所を庁舎に限らないABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)の推進などについて議論し、事務局は各部署に対するヒアリングの結果から「ABWを基本とする働き方が、今後中長期的には、ほとんどの部署において実現可能」と説明。将来的には分散した職員がオンラインでつながるバーチャル県庁の在り方を提示した。
バーチャル県庁への移行で本庁舎と地域機関の関係や役割も変化することから、委員からは「新しく建てる庁舎のダウンサイジングは、現在の想定より思い切ったものができるのではないか」といった意見が挙がった一方で、IT企業におけるオフィス回帰を念頭に、「揺り戻し」を懸念する意見もあった。
県は来年1月に次回の専門家会議の開催を予定。また、今年11月をめどに、県に関係する団体関係者が参画した新しい会議体を設置する方針。