埼玉新聞

 

<衆院選>埼玉の終盤情勢、11~15区まとめ 大物議員、予断許さぬ大接戦てこ入れ 優勢でも「厳しい」

  • 衆院選、埼玉の終盤情勢

 31日に投開票される衆院選で、埼玉県内15小選挙区の終盤情勢を探った。約3割の有権者が投票先を決めておらず、終盤の動き次第で情勢は変わる可能性がある。

■11区、小泉が優勢をキープ

小泉 龍司 69☆自 前(6)

島田  誠 63☆立 新

小山 森也 30 共 新

 小泉が7選に向けて優勢をキープしている。無所属での立候補が続いた小泉は、2003年以来となる自民公認での選挙戦。選挙活動は感染症防止対策のため、少人数、短時間、広範囲での街頭演説に注力し、コロナ対策の強化、結婚への直接支援の重要性などを訴えている。自民と公明支持層を固めるとともに、無所属時に獲得した幅広い支持層が強みだ。

 前寄居町長の島田は、1年以上前から精力的に広報活動を行い、立憲支持層以外の浸透に向けて奮闘を続ける。選挙活動では、個人のつながりによる後援会組織と一体となり、深谷、本庄、秩父市の都心部を中心に街頭演説を展開。県北の世界的な観光地化を目指し、次世代型産業の誘致などを訴えている。

 党県内最年少候補として初挑戦の共産の小山は、小まめな街頭演説で若い世代や浮動票の獲得にも精を出す。命と暮らしを最優先、石炭火力の廃止、ジェンダー平等などを強調し、政権交代の受け皿として支持を呼び掛けている。共産支持層は固めているが、やや広がりを欠く。

※11区=秩父市、本庄市、深谷市、熊谷市(旧江南町域)、小鹿野町、長瀞町、皆野町、横瀬町、東秩父村、神川町、上里町、美里町、寄居町

■12区、野中と森田が大接戦

森田 俊和 47☆立 前(1)

野中  厚 44☆自 前(3)

 自民の野中と立民の森田が前回同様に大接戦を演じている。前回はわずか492票差の僅差で野中が勝利したが、今回も両者一歩も譲らぬ大激戦。同日投開票の熊谷市長選も絡み最後まで予断を許さない。

 野中は立民や共産などの野党共闘を批判しつつ、3期の実績を強調。業界団体からの支援や組織力も生かし、地盤の加須市や羽生市で票固めに力を入れる。外相の茂木敏充が応援に訪れたほか、26、27日には熊谷駅に党本部広報部長の河野太郎、党組織運動本部長の小渕優子も駆け付け、てこ入れを図った。前回同様に重点を置く熊谷に力を注ぎ、熊谷市長選に立候補した元県議の小林哲也とも連携しつつ、支持拡大を図っている。

 森田は有権者の約4割を占める大票田の地元熊谷では優位に立つ。これまでは弱かった加須や羽生でも徐々に浸透。前知事の上田清司らの応援を受け、熊谷市長選に出馬した元市議の閑野高広とも協力し、さらなる票の掘り起こしを狙っている。共産が候補者を擁立せず、前回共産候補が獲得した約2万票は、多くが森田に流れるとみられるが、保守層の一部が離れる懸念も残っている。

※12区=熊谷市(旧江南町域を除く)、行田市、加須市、羽生市、鴻巣市(旧川里町域)

■13区、土屋が安定した戦い

赤岸 雅治 60 共 新

土屋 品子 69☆自 前(7)

三角 創太 33☆立 新

 8選を目指す自民の土屋がリードし、安定した戦い。立民の三角は猛追しており、共産の赤岸が追う。

 自民の土屋は高い知名度と組織立った活動で、地元の春日部を中心に自民、公明支持層に幅広く浸透。春日部市長選では、土屋と二人三脚で活動を展開した自民・公明推薦の現職が破れたが、当選した新人も保守系で衆院選への影響は限定的とみられる。無党派層への取り込みも図りながら、陣営は「厳しい選挙だ」と引き締めている。

 土屋を追う三角は前回、希望から11区に出馬しており、若さをアピールしながら知名度アップに力を入れてきた。春日部駅、東武動物公園駅、久喜駅を拠点に、選挙区を細かく回る。立民支持者を固めながら、票の掘り起こしに全力を挙げる。地元県議、市議らの支援も受け、医療体制の充実、教育や子育て支援などを訴えている。

 共産の赤岸は国政3度目の挑戦で、地道に街頭活動などを展開。同市長選では共産が推薦する候補が破れたが、一定の票を獲得した。他の地域でも共産支持層を固め、比例区での上積みを目指す。

※13区=春日部市(旧春日部市域)、久喜市(旧久喜市域、旧菖蒲町域)、蓮田市、白岡市、宮代町、越谷市の一部地域

■14区、三ツ林が盤石の態勢

三ツ林裕巳 66☆自 前(3)

鈴木 義弘 58☆国 元(2)

田村  勉 73 共 新

 前内閣府副大臣の自民の三ツ林が盤石な組織力でリードしている。国民の鈴木と共産の田村が追う。

 三ツ林は、6市2町の支部を中心に、地元の県議や市議、推薦する公明も全面支援し、各地域で安定した組織立った運動を展開。鈴木の地元である三郷にも食い込み支持を拡大。保守層の票を着実に積み上げ、無党派層への浸透にも力を注ぐ。個人演説会や街頭では、国産ワクチンの開発推進や感染症に対応した地域医療提供体制の早期構築を主に訴えている。

 鈴木は、「保守系改革派」を掲げて国の構造改革の必要性を訴え、反政権の受け皿として支持獲得を図る。後援会を中心に地元や近隣の県議、市議らも支援し、地元三郷を重点化し選挙戦を展開。幸手などでは駅頭や街頭演説を中心に票の掘り起こしを行う。前知事の上田清司らも応援演説に入るなどてこ入れし、無党派層の支持拡大も目指す。

 元長瀞町議の田村は、駅頭や街頭演説で知名度アップに懸命。政権交代を訴える鈴木を猛追。選挙カーの街宣で支持を呼び掛け終盤の追い込みを図る。

※14区=八潮市、三郷市、幸手市、吉川市、春日部市(旧庄和町域)、久喜市(旧鷲宮町、旧栗橋町域)、杉戸町、松伏町

■15区、田中がややリード

田中 良生 57☆自 前(4)

高木錬太郎 49☆立 前(1)

沢田  良 42☆維 新

 5選を目指す自民の田中が一歩リードし、前回衆院選で比例単独で初当選した立民の高木が追い掛ける展開。維新の沢田は支持の広がりを欠いている。

 田中は強固な後援会組織をバックに選挙区内を精力的に回り、副内閣相などを務めた実績を強調。自民、公明支持層を固め、「健全な保守の議席を守る」と訴える。前首相の菅偉義、前環境相の小泉進次郎ら党幹部が続々と応援に駆け付けているが、「私の相手は、枝野代表から落下傘で送り込まれた刺客。非常に厳しい」と危機感を持ち、無党派層の取り込みも狙う。

 高木は市民団体を介し、事実上の「野党統一候補」として立民、共産支持層を固めてきた。党代表の枝野と二人三脚で政策実現に取り組むことを強調。9年間の主夫経験を生かした暮らしの底上げからの経済対策を訴え、若い世代や子育て世代などにも浸透を図る。

 2019年の参院選埼玉選挙区で20万票を集めた沢田は1年半毎日駅に立ち、自転車で選挙区内を走って認知度を上げてきた。コロナ対策、大幅減税を訴え、浮動票の獲得を狙う。

※15区=さいたま市桜区、南区、蕨市、戸田市、川口市の一部地域

【表記説明】候補者は届け出順。敬称略。年齢は投票日の10月31日時点での満年齢。☆は比例北関東ブロックとの重複立候補を表す。党派の略称は、自由民主党=自、立憲民主党=立、公明党=公、日本共産党=共、日本維新の会=維、国民民主党=国、NHKと裁判している党弁護士法72条違反で=N、無所属=無。前、元、新は前職、元職、新人の略。(数字)は当選回数。

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