埼玉新聞

 

【シトウレイの街角スタイル研究所 2024年秋編】泥くさくて濃いつながり 手売りだけのブランド

  •  「NON MERCI」のビジュアルイメージ

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  •  「NON MERCI」を手がける村越雄大君=2022年12月、東京・原宿(撮影・シトウレイ)

     「NON MERCI」を手がける村越雄大君=2022年12月、東京・原宿(撮影・シトウレイ)

  •  ミリタリー風のジャケットをリメークした「NON MERCI」のアイテム=2022年10月、東京・原宿

     ミリタリー風のジャケットをリメークした「NON MERCI」のアイテム=2022年10月、東京・原宿

  •  「NON MERCI」のTシャツ

     「NON MERCI」のTシャツ

  •  「NON MERCI」のビジュアルイメージ

     「NON MERCI」のビジュアルイメージ

  •  「NON MERCI」のビジュアルイメージ
  •  「NON MERCI」を手がける村越雄大君=2022年12月、東京・原宿(撮影・シトウレイ)
  •  ミリタリー風のジャケットをリメークした「NON MERCI」のアイテム=2022年10月、東京・原宿
  •  「NON MERCI」のTシャツ
  •  「NON MERCI」のビジュアルイメージ

 シトウレイです、こんにちは! 突然ですが「NON MERCI(ノンメルシー)」ってブランド、知っていますか? 2022年にスタートし、いま東京・原宿かいわいでは新商品が発売されれば“秒”で完売する勢いなんです!

 手がけているのは販売員として経験を積んできた村越雄大君。そのスタイルは―。(1)良い服ができたら販売する不定期販売(採れたての野菜を売るテンション)(2)発売日は交流サイト(SNS)で告知(3)原則、直接会っての手売りだけ。発売日は絵本「ウォーリーをさがせ!」のように、街のどこかにいる彼をさがさなければいけない!

 いつでもどこでもネットでサクッと買うのが当然となった今、時代の流れとは正反対。けれど非効率で希少なスタイルを面白がり、応援するように「whiz」「GB」といった原宿の大御所ブランドや、キョンキョン(小泉今日子さん)からコラボの提案が舞い込み、ブランドのスペシャル感を際立たせています。

 人気の理由を雄大君は「いやもう、先輩たちや友達のおかげっす!」と謙虚に言うのだけど、アイテム一つ一つには驚くべきほどの「語るべきこと」が含まれている。例えば顧客に届ける商品を作るという「プロダクト」。そこに物語を潜ませた「デザイン」。さらにビジュアルイメージや映像の「見せ方」。そのこだわりはもはや、個人でやっているブランドの域を超えています。

 「販売員はいかにその服の魅力を伝えられるかが大事だから『語るべき内容が多いアイテム』を作ることは意識してます。それと、自分が買う側だったら納得できるという値段にしてます。だから正直、利益がほとんど出ていないヤツもあるんですけど(笑)」

 その人気を語る上で、原宿の外れにあるコーヒーとたこ焼きの店「いちひく」という存在も外せない。原宿の重鎮も初めましてのルーキーも、世代と肩書を超えて、しょい込んだもろもろを外してフラットな状態になれる磁場になっています。NON MERCIの多彩なコラボも、この店での出会いや会話が出発点に。SNSでつながるよりも原宿ではいちひくに通う方が話が早いし、何より濃いつながりが生まれる。この街はいつまでも泥くさい、リアルを好む傾向があるんです。

 非効率でも直接お客さまとコミュニケーションを取りたいという不器用な熱量。その不器用さゆえの、原宿のローカルコミュニティー(=いちひくの仲間たち)からの応援。小さくても濃いつながりを大切にする独特のスタイルが、このブランドならではの「付加価値」になっています。(ストリートスタイルフォトグラファー)

 【シトウ・レイ】石川県生まれ。早稲田大卒。雑誌で写真家として活動を始め、日本を代表するストリートスタイルフォトグラファーとして国内外で高い評価を得る。テレビやラジオ、講演など幅広く活動するほか、ユーチューブ「シトウレイチャンネル」で最新のファッション事情をリポートしている。

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