100年ぶり再発見!絶滅危惧種ミズキカシグサ、埼玉・宮代で密生 大変珍しく県レッドデータにも掲載なし
県内では長い間確認されなかった絶滅危惧種の「ミズキカシグサ」が、宮代町の農業公園に隣接する水田で見つかった。およそ100年ぶりの再発見で、専門家は豊かな自然環境のバロメーターになると指摘する。発見した自然保護団体「NPO法人宮代水と緑のネットワーク」代表理事の茂木俊二さん(68)は「農のあるまちの資産として生息地一帯を保全していけるよう町と協力しながら取り組んでいきたい」と話している。
茂木さんが同種を最初に見つけたのは14年前。農業公園「新しい村」周辺で希少種の調査をしていたところ、隣接する稲刈り後の水田で点在して生息する葉が十文字形をした見知らぬ植物を発見した。調べてみるとミズキカシグサではないかと思われた。ところが、翌年以降、確認できなかったため、発芽しないものと半ば諦めていたが、今年になって水田に密集して生息しているのが確認された。
茂木さんは「水田は、台地との境にあり、今年はその境から数メートルほどの不耕作地帯を設けて田植えをしていた。耕作しない一帯から眠っていた種が発芽したようだ」と推測する。
■環境の象徴
県のレッドデータブック制作の調査に携わっているNPO法人県絶滅危惧植物種調査団の矢島民夫理事らが10月上旬、調査に訪れ、「ミズキカシグサ」だと確認した。矢島理事は「県内では、植物学者の牧野富太郎が大宮(現・さいたま市)で1888年に採取して標本にした記録があるが、それ以降は確認されていなかった。大変珍しく貴重な植物」と評価。環境保全の調査研究などを行っている自然環境研究センターの三村昌史上席研究員も「全国的にも絶滅している地域が多く希少性が高い上、生育していること自体が他の絶滅危惧種も生息できる環境の象徴ともいえる」とし生息地の一体的な保全の重要性を説いた。
県みどり自然課では、「これまで自生が確認されなかった」として、ミズキカシグサを県のレッドデータブックには掲載していない。現在取り組んでいる調査内容に基づき改訂作業を進めることにしている。
■住民理解が鍵
茂木さんらは現在、絶滅の危機を回避するため、生息地帯から離れた所に設けた保全地にミズキカシグサを数株移植。「生息地帯には、ホシクサなど県内でも珍しい希少種が他にもある。今回発見された場所は私有地のため、可能な範囲での配慮を頂きながら、地域住民にも理解を深めてもらい、町と協力しながら生息地一帯を保全していきたい」と話す。
同園を所管する同町産業観光課は、「同団体とは新しい村における環境保全活動に関し協定を結んでいる。発見場所は私有地のため、農作物の生産性に支障を来たさないよう配慮しながら可能な限り保全に協力していきたい」としている。
■ミズキカシグサ
水田や湿地に生える一年草で、花期は8~11月。10~30センチほどの高さまで成長する。淡紅色の花を咲かせ、葉が十字対生であることが特徴。実は球形で紅紫色を帯びている。開発や農薬使用などにより各地で減少しており、四国と九州のほか、関東以北では山形県などでわずかに自生が確認。神奈川県や群馬県では絶滅したとされている。